第110話 温泉づくりとハクの服の不思議

「神乃悠斗はこう見えてもこの星の神様なの。だからまったく問題ないわ。それにここは本来神域ではないの。イレギュラーなのは私と神乃悠斗の方よ」

「は、はあ」

「こう見えてもって何だよ。めちゃくちゃ真面目に神様活動してるだろ」

「君の活動は、半分以上が神様活動というより領主活動じゃないっ!」

「おまえの教え方が雑すぎるから我流になったんだろ」

「あ、あの、お2人とも。お客様の前ですよっ」


 うっかり言い合いを始めてしまったオレとフィーネを見かねて、珍しくハクが止めに入ってくれた。


「あ、悪い」

「いえ、僕はいいんですけど、炎精霊さんが困るかと」

「ふふ。皆さん仲がいいですね。神様ってもっとお堅い存在だと思ってたので、なんだか力が抜けてしまいました」


 炎精霊は「活動的で義理堅い」ほか寛大な性格らしく、楽しそうに笑っている。


「いやあ、あはは。こいつと話してるとつい白熱しちゃって」

「そういう相手がいるのは素敵なことです。……では、この形で温泉づくりを進めます。気温の調整は我々だけでは難しいので、そこはお任せしてもいいですか?」

「分かりました。温泉、楽しみにしてます」


 ◆ ◆ ◆


 温泉づくりの話をしてから約1か月後。

 あのあと、炎精霊から山精霊がいると火山島のエネルギーがより安定すると聞き、山精霊も30名ほど救済召喚した。

 山精霊と炎精霊は非常に相性がいいようで、火山の一角に村を作って共同生活を送っている。


 オレはこの1か月で様々な世界の温泉を巡って調査をし、名物にできそうなものをいくつか検討して、周囲の気温を調整して効率よく温泉にエネルギーが流れるよう【理の改変】を行なった。

 最初はホテルでも建てようかと思ったが、結局は景観を損ねないよう旅館風の建物と簡易的な休憩所を建てるという案に落ち着いている。


 ――温泉といえば、やっぱり浴衣はいるよな!

 旅館や休憩所、温泉の管理は炎精霊と山精霊がやってくれるみたいだし、精霊たちの収益にも繋がって一石二鳥だ。


 精霊たちの姿は、人族には人族に見えるよう【理の改変】で操作する。

 というか、森精霊たちも最初からこうすればよかった!!


「火山島の温泉がある一帯が観光地になれば、ラテス初の観光地になるな」

「そうですね。僕もお風呂は好きなのでとても楽しみですっ」

「温泉卵も食べ放題だ。プリンや温泉饅頭も作れるぞ」

「お風呂で食事ができるんですかっ!?」


 ハクは目をキラキラと輝かせ、耳をピコピコさせる。


「……そういやハク、おまえのその服って体の一部だとか言ってたよな? おまえ風呂でどうしてるんだ?」

「? このままですよ。ブルブルすれば乾きますし。収納もできますけど、特に必要を感じないので」

「な、なるほど……?」


 服が濡れて体にまとわりついたりしないんだろうか?

 風呂の時くらい、脱いだ方がリラックスできそうな気がするんだが……。

 相変わらず、神様アイテムであるハクの生態はよく分からない。

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