第109話 火山島に温泉……だと……!?

火山島に炎精霊を召喚して一週間ほどした経った日。

炎精霊の1人が神殿を訪ねてきた。


「突然お伺いしてすみません」

「いえいえ。とりあえず中にどうぞ」


炎精霊を応接室へ通すと、ハクが温かい紅茶を持ってきてくれた。


「火山島の住み心地はどうですか?」

「素晴らしいです。あそこは土地のエネルギーがとても強くて、この一週間ほどでみんなすっかり元気になりましたよ」

「それはよかったです」


以前は弱くゆらゆらと揺れていた髪も、今ではキラキラと強い輝きを放っている。

肌ツヤもよくなり、前回会った時とは大違いだ。


「それであのあと、神様に何か恩返しができないものかとみんなで考えたんです」

「そんな。住んでくれるだけで十分嬉しいし有難いですよ」

「いえ、それでは私たちの立場がありません。考えた結果、あの火山島の一角に温泉を作ったらどうかと思いまして。今日はその話をするために参りました」


温泉!!!

O N ☆ S E N ! ! !


前の世界で、たまの休みに年に1~2回ほど温泉に行っていた。

これは前世のオレの数少ない癒しの1つだった。


しかも今、この世界でのオレには時間的余裕も十分にある。

つまり温泉も入り放題。

美しい景色に囲まれて、いつでも自由に温泉に浸かれるなんて。

なぜ今まで考えなかったんだオレえええええええええええ!!!


「ぜひ! ぜひともお願いします!」

「え、は、はい。喜んでいただけたようでよかったです。軽く一応設計図を作ってきましたので、ご確認ください」


炎精霊はテーブルに一枚の大きな紙を広げ、詳細を説明してくれた。

髪も服も燃えているように見えるのに、不思議と周囲に被害がない。

紙が燃えてしまう気配もない。

炎精霊って不思議な種族だな……。


「せっかくなら、休憩所もセットで作るのはどうです?」

「いいですね。ただこの辺りは気温が高く、人族がくつろげる場所ではないかもしれません」

「なるほど……」


つまり炎精霊は、オレとハクのためにこの計画を立ててくれたということか。

それはそれで有難いが……しかしせっかくの温泉を独占するのも気が引ける。

あの大自然の中でゆっくり温泉を満喫できるとなれば、きっと人族の行動範囲も広がるはずだ。


「温度くらい変えればいいじゃない」

「あ、なるほど【理の改変】で人族も行けるくらいに修正すれば――ってうわっ」


気がつくと、フィーネが横の椅子に座って設計図を覗き込んでいた。


「おまえまた唐突に!」

「ノックしたのに気づかないのが悪いじゃないっ」


「あ、あの……?」


オレとフィーネが言い合う姿を見て、炎精霊は困惑した様子でフィーネを見ている。


「初めまして。私は生と死を司る神、フィーネ・リエンカよ」

「おまえそんな名字だったのか。今初めて知ったよ」

「あれ、言ってなかったかしら」

「……あ、あなたも神様なんですか。ということは、もしかしてここは神域!? 我々は本当にこの土地にいていいのでしょうか」


炎精霊は混乱し、あわあわと半ばパニック状態になってしまった。

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