第105話 炎精霊が仲間に加わった

 オレの言葉を受け、炎精霊のうちの1人が前に出る。


「は、はじめまして。ラテス、という国は聞いたことがないのですが、大陸のどのあたりに位置している国なんでしょうか? あの、我々に侵略の意思はなく、気がついたらここに」


「ここはあなた方がいた世界とは別の世界です。あの星の機能が停止していたので、この星に救済召喚しました」

「……え、し、召喚!? そういえば先ほど、神様とかなんとか」


 まあ、突然異世界に連れて来られたのだから混乱するのも無理はない。


「ええ。この星を管理している神様です。とは言っても、まだまだ未熟で勉強中ではあるんですが」

「……ええと」


 炎精霊たちは皆、不安そうな顔でこちらの様子を伺い緊張している。

 時折仲間同士で目くばせしたり、首をかしげたりしている。


「混乱させてしまってすみません。単刀直入に言いますと、この星の住民になっていただけませんか?というお誘いです」

「……条件をお伺いしても?」


 今話している炎精霊は比較的若い青年だが、こうして代表として出てくるだけあってしっかりしているようだ。

 こちらの意図を読もうとしているのだろう。


 まあそんな大した意図、こっちにはないんだけどな!


「条件は――そうですね、この島を管理していただけるとありがたいと思ってます」

「か、管理、ですか?」

「炎精霊は火山に詳しいと聞きまして」

「……それはまあ、火山の管理は我々の得意とする分野ですが」


「もし管理をお願いできるのであれば、この火山島はあなた方で好きに使っていただいて構いません」

「――え!?」

「たまにオレやこいつ――ハクが様子を見に行くとは思いますが。あと旅人や冒険者が来た際には、温かい目で見守ってくださると助かります」


 ――あれ。

 なんか呆然としてるけど、オレ変なこと言ったかな。


「ほかに何か要望があれば検討しますので、遠慮なくおっしゃってください」

「い、いえ! 我々にとっては願ってもないことです。ただ、こんな素晴らしい火山島を我々だけで、となると、その……お納めするものをご用意できるかどうか」

「あ、そういうのはいいですよ」

「――は? え、いいってどういうことです?」

「言葉通りの意味ですよ。ここを管理しながら自由に暮らしていただいて、炎精霊さんたちの文化がここに根付けば、オレにとってはそれが一番嬉しいです」


 正直、この星の通貨を管理してるのはオレだし、もらってもあまり意味がない。

 神様に税金納めるなんて聞いたことないしな!


「ああでも、できればうちの通貨システムを使っていただけると大変助かります」

「は、はい。それはもちろん」


 オレは強化ガラス端末を全員に配布し、所有者登録をしてもらって、電子マネーや諸々の機能について説明した。


「この端末の売却と書かれた部分をタップして、今使用している通貨や所持品を放り込めば、勝手に換金されて端末内の残高が増えます」


 オレは【アイテムボックス】内のモモリンを売却し、残高が増えるのを見せた。


「こんな高価そうで便利なもの、無償でいただくわけには!」

「使ってもらえることでこちらにもメリットがありますので」

「しかし……ううむ。では私たちにできることがあれば、ぜひとも声をかけてください。いつか何かしらの恩返しをさせていただきたいです」

「分かりました。この星に炎精霊はあなた方だけですので、そう言っていただけると心強いです」

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