第101話 星の力が増えた理由は

 休憩を終え、オレとハクは湖の手前までやってきた。

 湖は見事な円形に抉られた山のくぼみに水が溜まってできたもので、いわゆる火山湖やカルデラ湖と呼ばれているものだ。


「絶景だな。でもオレ、こんなイメージしたっけ?」


 最近、オレの貧弱なイメージから創造されたとは思えない光景を目撃することも多く、いったいオレの脳内はどうなっているのかと不思議でならない。


「星の力が強いと、1のイメージから10のものが自然発生することもあるんです。ご主人様が描いた火山のイメージにこの星の力が作用してできたのかもしれません」

「そうなのか。まあ、星も生きてるっていうもんな」

「でもそういう星は、一般的に【特級惑星】としてかなりの高値で売買されていると聞きます。ラテスはセール品の【完全未開拓惑星】だったはずなので、もしそれが起こったのだとしたらすごい進化ですね」


 ラテスは、今やフィーネの家族も大注目する力の強い星になっている。

 それはもう、リンネが嫉妬してあんな行動を起こしてしまうくらいには。


「本当、なんでこんなに進化したんだろうなあここ」


 ここに転生させられた当初は、食べ物の1つもない星だったのに。

 布団すら1セット買うのがやっとで、なけなしのポイントで購入した菓子パンだけで過ごした夜もあったのに。

 それからまだ2年ほどしか経ってないのに。


 今では、無限に使えるはずのポイントを使うこともなくなった。

 前の世界のものなんて購入しなくても、こちらの世界のもので十分間に合っている。


 スキル【解析】で家電製品の仕組みを解き明かし、こちらにある資源で生産できるよう【理の改変】を行なって、ラテス村やエクレアの住民、それから精霊たちに伝授した。

 今では冷蔵庫も電子レンジも洗濯機も掃除機も、すべてこちらの文化として定着している。


 こうして思い返すと、何も分からない中でオレもまあまあ頑張ったと思う。

 でも、むしろこうした家電の文化を作ったことで、エネルギーの消費量は大幅に増えているはずだ。


「……僕は何となく分かる気がします」

「――え?」

「むしろ、どうして皆さん分からないんでしょうか」


 ん? え?


「ハク、もしかして星のエネルギーが高まってる理由知ってるのか?」

「……何となくは。でも、あまり言わない方がいいと思ってます」


 えええええ。


「どういうことだ? 実はよくないことなのか?」

「いえ。ご主人様のラテス開拓は、本当に素晴らしいと思います」

「じゃあなんで……」


「できれば、あまり広めないでいただけると」

「わ、分かった」

「……とは言っても、本当にいろんな偶然が重なっているだけなんです。でも1つ大きなこととして挙げられるのは、この星が動物を生まないということです」


 ――え。


「それは欠陥品ってことじゃなかったのか?」

「そうです。動物を生まなければエネルギーの消耗が少なくて済みますが、代わりに大きな刺激もなく変動も起きません。植物などの自然を介してただ循環し、星の活動によりじわじわ減少していく。本来ならここは、それだけの星だったんです」

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