第100話 新たな島の探索

 島に着いたオレとハクは、この島を2人で散策してみることにした。

 今までいた大陸とは違い、地面のほとんどがむきだしの岩で凹凸も激しい。

 植物は少なく、ひたすらゴツゴツとした岩の上を岩から岩へと渡り歩くような足場の悪さだ。


 そんな一歩間違えば足を挫きそうな大自然の中を、ハクは何でもない道のようにひょこひょこぴょんぴょんと進んでいく。


 ――こいつだけ重力から解放されてるんじゃないか?

 なんて、思わずそんなことを考えてしまう身軽さ。


「は、ハク、ちょっと待ってくれ」

「す、すみませんっ! 大丈夫ですか? やっぱり僕に乗りますか?」


 遅れているオレに気づいたハクが慌てて戻ってくる。

 足場の悪さに加え、ここは真夏のように気温が高い。

 少し歩いただけで際限なく汗が流れ、岩の上に黒いシミを作っていく。

 年中快適なラテスとは大違いだ。

 日差しが強いというよりは、地面から熱が上がってきている。


「いや、たまには体を動かさないとな。……にしても結構な環境だな」

「ではせめて【シールド】を使ってください。【シールド】があれば、熱から守ってくれます」


 ハクに言われたとおりスキルを取得し発動すると、今までの暑さが嘘のようにおさまり快適になった。

 どうやら見えない薄い膜に覆われるスキルのようで、動きに支障はまったくない。


「すげえ。暑さがなくなるだけでだいぶラクになったよ。ありがとな」

「えへへ。怪我もしづらくなるので一石二鳥です」

「おまえは平気なのか?」

「僕は暑さ寒さは感じないので」


 ――ときどき思うが、実は神族より神獣の方が強くて優秀なんじゃないのか?

 なんでこいつはアイテムとして使役される側なんだ。

 むしろこっちが支配者でもいいのでは?


 オレは再びぴょこぴょこ進みだしたハクを見て、ため息をつかずにはいられなかった。



 しばらく岩場を上っていくと、周囲を見渡せる高台へと出た。

 先は下り坂になっていて、その向こうには大きな湖が広がっている。

 そしてそのむこうには、巨大な火山が聳え立っていた。


「せっかくだし、ここでちょっと休憩しようか」

「はいっ!」


 オレは岩場に座り、持ってきたお弁当を広げる。

 今日のお弁当はハクが作ってくれたものだ。

 蓋を開けると、中にはおにぎりと卵焼き、唐揚げ、ハンバーグ、肉巻きなどの「THE☆お弁当」というラインナップが揃っていた。

 肉が占める割合が異様に多いのがハクらしく、微笑ましい気持ちになる。


「うまそうだな」

「どうぞ召し上がってください」

「じゃあ――いただきます」

「いただきますっ」


 今までの生活で、互いの食の好みはほとんど把握している。

 しかもハクはどんどん料理の腕をあげており、もはやプロと比較しても劣らないクオリティの高さだ。


「うまい! この唐揚げ、ジューシーだし衣もすごくいい感じだ」

「! よかったですっ」

「おまえ本当、料理人になれそうだよな」

「あわわ、恐縮です」


 今日のドリンクは、森精霊のシルヴァからもらったブラックマテ茶を冷やしたもの。

 香ばしくスッキリ飲みやすいハーブティーで、料理の味を邪魔しない、普段使いにぴったりのお茶だ。


「ああー、生き返るううう」

「体に水分が染みわたりますね」


 高台に座って食事をしながら、2人で「ほう」と和む幸せ。

 こんな幸せなひとときを、アイテムを使ってショートカットするなんてもったいないにも程がある。

 ほかの神様たちは、いったい何を楽しみに神様活動をしているのだろう?


 食事を終えて一息ついたら、ここを降りて湖の先にある火山に行こう。

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