第5章 神様ランクC 星の秘密と仕組みのこと

第99話 次の目的地は海の先だあああ!

 ダンジョンの件もひと段落し、オレとハクは気を取り直して再び南方の開拓に向かうことにし――ようと思ったのだが。


「そういやさ、この星ってこの大陸だけなのか?」

「それもご主人様次第ですよ。星の大きさは決まってますが、【ラテスの地図】の範囲内であれば自由です」

「なるほど」


 それなら海を渡ってみるのもいいな。

 火山や雪原が陸続きだと、危険だし厄介なことになるかもしれない。

 現在地は、ちょうど今いる大陸の左端に位置している。

 それなら、あと少し行けば海に出られるはずだ。


「ハク、海に出てみようか」

「はいっ!」


 オレはエクレアの南付近から南下するのをやめ、東へ向かうことにした。

 海へは、そこからハクの足で5分ほど走るとたどり着くことができた。


 久々に見る広大な海。

 川や湖は見ることがあったが、こっちで海を見るのは初めてだ。


 ――どこの世界でも、やっぱり海の大きさには圧倒されるもんだな。


 しかしそこは砂浜ではなく崖で、海に出るには崖を降りるしかない。

 砂浜をイメージしておくんだった……。


 そう思ったが、こんな時のためのスキル【神様】だ。

 ここを砂浜に変えれば、ここから海に出られる。


「スキル【神様】!」


 そう唱えると、周囲が光を放ち、そして地形がみるみるうちに変わっていく。

 まるで星の歴史を早送りで見ているような感覚だ。


 数分ほどで、断崖絶壁が見事な砂浜へと変化した。

 波が引いては寄せ、寄せては返す。

 水は美しく透き通っていて、海の底まではっきりと見える。

 まるで沖縄の海みたいだ。


「素晴らしい景色だな」

「素敵ですね。ご主人様の創造力にはいつも驚かされます」

「嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」

「本当にすごいことなんですよ! 【エリアカプセル】も使わずにこんな美しい世界を作ってしまうなんて」


 ハクの言っている【エリアカプセル】というのは、以前神界巡りをした際に見た、あの直径10㎝程度のガラス玉に街や森、海などが閉じ込められている星の開拓用アイテムだ。


「そ、そうか? いつか1つくらい使ってみるのもいいかなと思ってるけど、ネタ切れまではのんびり自力で頑張るよ。いざという時はスキルで再構築もできるしな」

「はいっ!」


 ハクの嬉しそうな顔を見て、オレのパートナーになった【何でもしてくれるモフモフ】がこいつでよかったと心底思う。


 そうしているうちに、海のはるか先に1つの島らしきものが見えていることに気づいた。


「次の目的地はあそこだな」

「いいですね。ご主人様の神様活動は、なんだか冒険みたいですっ」

「お、冒険の良さが分かるか。えらいぞハク」

「えへへ」


 いつものようにハクに乗り、オレとハクは島を目指すことにした。

 ハクは海の上を飛ぶ――


 ――のではなく、なんと海の上を疾走し始めた。


 ハクが海面に足をつけるたびに、キラキラと輝く水しぶきが光り、大きな波紋が広がっていく。

 たしかに足をついているのに、海面は弾力をもってハクの足を受け止める。

 まるで海が巨大なゼリーになったかのようだ。


 す、すげえ。さすが神獣。

 オレも神様なわけだし、これはもしかしたら――!?


 ……いやでも、万が一溺れたら恥ずかしすぎる。

 島についたら浅いところで試してみよう。うん。

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