第87話 モフモフの立場と神様との関係性
◇ ◇ ◇
「――じゃあ姉様、またね」
「またね。楽しかったわ。ハルト君も、突然来たのに部屋まで貸してくれてありがとう。神様活動、頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
リンネがうちに来て数日が経った日の朝、そろそろ仕事に戻らないといけないからと、リンネは神界へ帰っていった。
「おまえは帰らなくていいのか?」
「私は平気。ここは元々私の管轄だもの。ほかの星もちゃんと【神鏡】で見てるし、問題ないわ」
「というか、この星だけこんな特別扱いしていいのか?」
「もちろんほかの星でも何かあれば行くわよ。でも、今のところほかの星は良くも悪くも安定してるし、私が行ってもすることないのよね」
「そんなもんなのか」
ほかの星の神様がどんな管理をしているのか、気にならないと言ったら嘘になる。
でも――
まあ、ハクとマイペースにやっていくって決めたしな。
フィーネたちの様子だと、どうやらモモリンはかなり大成功の部類みたいだし、恐らくそんなダメってこともないだろう。
そういえば、そろそろ精霊たちを増やしたいし、もう少し土地の開拓も進めたい。
今度は火山とか雪原とか、ちょっと変わった場所がいいな。
炎精霊と氷精霊を呼びたいし、きっとそういう場所もあった方がいいだろう。
ほかにも花精霊、樹木精霊、土精霊、雪精霊、光精霊、闇精霊なんてのもいるらしい。
人族のほかに獣人を増やすのも良さそうだ。
要塞都市エクレアより南はまだ行ったことがないし、今度はそっちを開拓しよう。
グラス高原近辺は、今のところラテスの森を通る道しかルートがなく、人族は行くことができない状態だ。
ラテスの森を避けて、南からグラス高原に繋げる形で開拓していけば、人族たちの行動範囲も一気に広がる。
「午後から土地の開拓を進めようと思うけど、フィーネはどうする?」
「私は遠慮しておくわ。ここは一応、君の星なわけだし。神様活動に関することで私が介入するのはなんか違うかなって」
「そうか。まあそうだな。じゃあハク、準備ができ次第行こうか」
「はいっ」
まあオレ以外の神族がいるとハクの無口に拍車がかかるし、ハクのためにも2人の方がいいかもしれない。
やっぱりアイテム――というか神獣は、たとえフィーネのような相手であっても神族相手だと緊張するんだろうか?
この間のお菓子パーティーの時は楽しそうにしてたけど。
基本的にハクは、オレがフィーネやリンネと話している間、こちらから声をかけない限り一切会話に入ってこない。
この間神界で買い物中に聞いた時、ほかの神様の傍にいた際はほとんどただの雑用係だったと言っていた。
あまり深く考えたことはなかったが、神族とモフモフというのは本来それだけ遠い存在なのかもしれない。
――もしかしたら、辛い目にも遭ってきてるんじゃないだろうか。
神族にとってはただのアイテムに見えているのかもしれないが、転生者のオレから見れば、ハクは獣耳の生えた超絶美少女だ。
しかも大抵の命令には逆らわないし、むしろ自分から積極的に尽くしてくれる。
こんな子を、もし邪な考えを持つ転生者が手にしたら。
理性の足りない馬鹿な男が手にしたら。
正直、オレだって一度もハクで妄想してないと言ったら嘘になる。
だからといって手を出そうという気持ちにはならないけど。
――まあ実際のところは分からないけど。
べつに心配するようなことは何もなかったかもしれないけど。
でもハクのこと、大切にしてやらなきゃな。
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