第84話 神界巡りとハクの抱える思い

 神界には、オレが元いた世界やラテスては手に入らない商品がたくさんあった。

 神様アイテムが売られている店も多数存在し、カタログでは見かけなかったアイテムも数えきれないほど置いてある。


「あれは何だ?」


 道を歩いていると、店の窓辺に飾られた商品が新鮮でつい見入ってしまう。

 今見ているのは、直径10㎝程度のガラス玉に街や森、海などが閉じ込められている不思議なアイテムだ。

 インテリアか何かだろうか?


 たしか日本にもこういうのあったよな。

 ――テラリウム、だっけ? 少し違うけど。


「これは【エリアカプセル】といって、カプセルに収納されている開拓用アイテムです。これを未開拓な土地に使用すると、一定の範囲がカプセル通りに構築できます」

「そんな便利なアイテムが!?」

「ほかにも、星の開拓用アイテムは豊富にありますよ」


 というか、オレめちゃくちゃ遠回りしてたんだな!

 い、いやでも、おかげでオリジナリティの高い星になってるはずだし、モモリンも好評だし、まあいいか。


「ハクは知ってたのか? 教えてくれてもよかったのに」

「ご、ごめんなさい……。ご主人様のやり方が好きだったので、言い出すタイミングを失ってしまって」

「え。そう、なのか。嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」


 しょんぼりしているハクの頭をそっと撫でてやる。

 すると俯いたままではあるが耳がピクッと動き、ピコピコし始めた。

 相変わらず分かりやすくて可愛い。


「最近は神様アイテムも発達して、星の開拓もお手軽になりました。それは良いことだと思うのですが、僕としては自分が必要なくなったような気がして寂しくて」

「今までの神様とは、どういう関係だったんだ?」

「ここ数千年はほぼ雑用係でした。それが嫌なわけではないんです。冷たくされたわけではないですし、神獣は神様にお仕えするために創られた存在なので、どんなことであっても使ってもらえるのは嬉しいんです。でも、このままいらない存在になったら――って思ってしまって」


 ――なるほどな。


「神界には天使もたくさんいます。僕たちモフモフは天使より上位種なので、価格もそれなりで……。なので天使にもできることしかしないのなら、僕たちである意味がなくなってしまうんです」


 そうか、だからハクは役に立とうと必死だったのか。

 女の子をアイテムとして使役するのは、虐げている気がして嫌だったのだが。

 でもそれは、オレの常識の押し付けでしかなかったのかもしれない。


 けど、オレにとってハクはハクだ。

 そりゃあ自分で購入したわけじゃないから値段のことは知らないけど。

 それでも今となっては別の誰かで替えの効く存在ではない。大事な家族だ。


「ほかの神族がどうかは知らないけど、オレにとっておまえは大事な家族だし、役に立つかどうかじゃないんだ。でもおまえが助けてくれるのはありがたいし、それがなければここまで来れてない。だからこれからも、ずっと相棒として一緒にいてほしいと思ってるし、助けてくれると嬉しい」

「! はいっ! えへへ、ご主人様っ」


 ハクは嬉しそうにオレの腕に抱きつく。

 ハクのこうしたくっつきグセは、元が神獣で獣だからなのだろうか。


 まあ正直、こんな可愛い女の子にこんなことをされて嬉しくないわけがない。

 が! 大人としてやめさせるべきか否かは迷うところだ。

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