第81話 少しは姉を見習ってほしい
リンネは真面目な性格のようで、休暇中だと言いながらも星の管理はしっかりとやっていた。
部屋には何やら星の管理に使うらしい【神鏡】や見慣れないアイテムが多数設置され、毎日決まった時間に部屋へ向かっては仕事をこなしている。
「フィーネは仕事しなくていいのか?」
「失礼ね。私もちゃんとやってるわよ」
「……いやでも、おまえが仕事してるとこほとんど見てないんだが」
「夜にまとめてやってるのよ。それにここで生活しながら星の調査をすることも立派な仕事よ」
「まあ、ならいいんだけど。そういや、鉱石力のことは何か分かったのか?」
日々を過ごしているとうっかり忘れそうだが、フィーネはこの星の鉱石力が急増した理由を探るためにここで生活しているのだ。
あとはオレから神様としての姿勢を学ぶとか何とか。
まあオレ、これといった特別なことは何もしてないんだけど。
というかフィーネの教え方が適当すぎるせいでほぼ我流だし、こんなオレを参考にしていいものなのか甚だ疑問だ。
名門神族は、幼いころからきちんと勉強してきてるんじゃないのか?
フォルテさんはまともそうに見えたけど――本当に大丈夫なんだろうか。
「それがまったく分からないのよ。だって君、何もしてないじゃない!」
「だから言っただろ」
オレが日常的にやっていることと言えば、ハクと一緒にラテスやエクレアの住民、それから精霊たちと交流し、近況を聞きつつ情報交換をしながら扱えそうな商品を探すこと。
一応目新しいものは積極的に購入し、試食なり何なりして試している。
たまにラテス開拓のために遠出もするが、これは少し前にグラス高原周辺に行って以降していない。
それ以外の時間は、家事をしたりハクとのんびりしたり、神界や神族に関することやスキル、神様アイテムについて勉強したりしているだけだ。
「精霊たちのおかげなんじゃないか? 精霊を呼ぶと星が潤うらしいし」
「そんなの大抵の星にいるわよ。それに神界には上位精霊もいるのよ? そんなことでこんな奇跡みたいなことが起こるなら、どこの星でも起こってるわ」
「うーん」
「3人で集まってどうしたの? ごめんなさいね、度々部屋にこもっていて」
「いえそんな。お仕事お疲れ様です」
「ありがとう」
「姉様、この星のエネルギーがこんなに増えた理由、分からない?」
「……そうねえ。それが分かれば大発見だけど、残念ながら。いろんな条件が重なって偶然起こってるのかもしれないしね」
リンネさんにも分からないなら、これもう無理なんじゃないか?
フィーネに分かることなのか?
「んあー! もやもやするわ! 神乃悠斗、気晴らしにガーネットさんのところに行ってケーキを焼いてもらいましょうよ!」
「おまえ厚かましいにも程があるだろ……」
「ええー! いつでもぜひって言ってたじゃない」
「おまえ仮にも名門神族だろ。社交辞令というものを知らないのか?」
「こんな美しい女神がわざわざ家まで行くって言ってるのよ? むしろ光栄なことじゃないかしら」
美しい女神という部分が間違ってないから余計に腹が立つ。
「じゃあ1人で行ってこい。オレはそんな恥ずかしいマネはしたくないからな」
「……ひ、1人はその、ちょっと何というか」
フィーネは急に口ごもり、もにょもにょと視線を彷徨わせる。
「……はあ。フィーネあなたねえ。名門神族が一般の、しかも人族に物をねだるなんて! 恥を知りなさい恥を」
姉様いいぞもっと言ってやってください。
「なによ2人してっ! もういいわよ! ふんっ」
フィーネはふてくされ、怒った様子で自室へと戻っていった。
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