第76話 星の力が激増してる……だと!?
「普通は、減りはしても増えないのよ。うまく循環させることに成功して初めて同量を保つことができるの。ごく稀に僅かずつ増えることもあるけど、それでもこんな1~2年の間に数倍に増えるなんてあり得ない。この星に入ったときに感じる空気からして違うもの」
「そ、そうなのか。ずっといると分からないが」
「君、人族だった時に隠れて特殊な修行でもしてた?」
そんな厨二病みたいなことする年齢とっくに過ぎ去ったわ!
「いやいや、いたって普通の社畜だったよ」
「そうよね」
いや、「そうよね」もなんか腹立つけど。
「で、増えるとどうなるんだ? その鉱石層とやらが爆発するんじゃないだろうな」
「まさか。そんなわけないでしょ。君、たまに発想がすごく変よね!」
「おまえに言われたくねえよ。で、どうなるんだよ」
「そうね……端的に言うと、良いことが起こるわね」
「端的すぎるだろ。もっと具体的に教えてくれ」
フィーネは相変わらずポンコツだが、とりあえず悪いことじゃなくてよかった。
「鉱石層の力が強まるってことはね、この星がエネルギーに満ちるってことよ。だから住民は健康になるし、疲れても回復しやすいし、精霊たちも環境整備にどんどん力を使えるし、植物もよく育つし、採れる果実もとっても栄養価が高いものになるわ」
「まじか。鉱石層すげえ」
「この星で採れた食材がすごくおいしいのも、きっとこの環境のおかげよ。君、いったい何したの?」
「ええ、いや、何もした覚えはないんだが」
何だろう? なんかしたっけ……。
「ああ、でも以前ハクが、オレがここに住んでることでここが神域になって力が増してるとか何とか言ってたな」
「……それだけ?」
「それだけだな」
フィーネは納得いかなさそうにオレを探るような目で見つめてくる。
が、いくら見つめてもその答えはここにはない。
鉱石力がそんなに増えてるなんて、オレ自身まったく知らなかったことだ。
「まあでも悪いことじゃないんだろ? なら別に」
「そうだけど悔しいじゃないっ! こんな欠陥品を特別な星に変えちゃうなんて聞いたことないわ」
「ええええ……」
というか欠陥品って。
人を突然飛ばしておいてよくもまあぬけぬけと。
「とにかくそういうことだから、しばらくここに住ませてもらうわよ」
「オレはべつにいいけど、ハクがなあ」
「……ぼ、僕はべつに」
「ほら、ハクもいいって言ってるじゃない」
「うーん、分かったよ。その代わり、こっちの仕事手伝えよ」
「任せて! 100人分くらい役に立って見せるわ」
発言から頭の悪さが伝わってきて既に不安しかない!
「おまえ料理できるのか?」
「できないわ」
「じゃあ洗濯は?」
「やったことないわね」
「……掃除は?」
「掃除がいる場所に住んだことがないわ」
「…………」
――あれ、やっぱりこいつ無能なんじゃ?
いや、神様としての知識はあるんだろうけど。多分。
「しょうがないでしょ! 私は名門神族なのよ!? そういう家事っぽいことをする習慣はなかったの!」
「ここは神殿じゃないから普通に掃除が必要だし、料理も洗濯も自分たちでやることになる。それでもいいなら住ませてやるよ」
「わ、私に家事をしろって言うの……?」
フィーネは「その発想はなかった!」みたいな顔で驚き固まっている。
「当たり前だろ。名門神族らしい暮らしがしたかったら自分の家で暮らせ。オレはおまえの使用人でも何でもないからな」
「む~~~~っ!」
「むくれても無駄だぞ」
「もう、分かったわよ! やればいいんでしょ! やるわよ!!」
「ならよし」
こうしてしばらくの間、なぜかフィーネがうちで暮らすことになった。
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