第4章 神様ランクC 名門神族の事情
第75話 「私もここに住むことにしたから」←は?
エクレアとガーネットを門の外まで見送り、オレは一息つこうとリビングに戻――ってきたのだが。
そこにはなぜかフィーネがいた。
「おまえ最近、出現率高くないか?」
「人をモンスターみたいに言わないでくれる!?」
「今日はいったい何の用だ?」
「べつに用なんてないわよ」
人ん家に勝手に上がり込んでくつろぎながら言うことではないと思う。
ハクも律義にお茶とお菓子なんて用意しなくていいのに……。
「分かってるじゃないハク! 今日のこれは何かしら」
「ローズヒップティーと、あとはモモリンジャムを乗せて焼いたクッキーです」
「モモリンジャムなのね! 甘酸っぱいいい香りがするわ」
「ジャムはローズヒップティーに入れてもおいしいです」
モモリンジャムを乗せて焼いたクッキーは、オレとハクの最近のお気に入りだ。
モモリンは程よい酸味もあるため、甘くなりすぎないのがいい。
「モモリンもモモリンジャムも、ほかの果実もとっても好評よ。仕入れた分からすぐに売れていくから、余ってたらどんどん【転送BOX】に入れていいわよ!」
「それはよかった。じゃあ、あとで追加で300個ほど入れておくよ」
モモリンは、オレがここに来て最初に創った食料だ。
そうした思い入れもあって家の裏のスペースに木を増やし、今では小さな果樹園くらいの規模にはなっている。
元々は、住民が食料に困ったときのためと思って収穫したものを【アイテムBOX】内に貯蔵していたのだが。
この土地は驚くほど植物がよく育ち、果実もたわわに実る。
そのため、このラテスで食料に困っている人など誰もいない。
結果、オレとハクでは食べきれない量のモモリンが次々と生産され、それに合わせて【アイテムBOX】内のモモリンも増えていくというのが現状だ。
――あ、しまった。
エクレアさんに分けてあげればよかったかな。
あとで持っていこう。
「ねえ、この家って、今ハクと2人で住んでるのよね?」
「そうだな」
「そう、なら問題ないわね! しばらく私もここに住むことにしたから」
「……は!?」
「部屋は余ってるでしょ?」
「いや、まあ余ってるけど……でもなんで」
母親と喧嘩でもしたのだろうか?
フィーネならありうる。
「……言っておくけど、母様と喧嘩したとかじゃないわよ」
「違うのか。じゃあなんだ」
「不本意なんだけど、母様が君のこと過大評価してとても気に入ってるのよ。それで、君から神様としての姿勢を学んできなさいって。まあ私は先輩だし、何より名門神族のエリートだし? 君から学ぶことなんてないと思ってるけど。でも母様がしつこいから、仕入れのこともあるしついでに少し泊まっていこうと思って」
どう考えても学ぶ姿勢が微塵も感じられないし、人の家に世話になる態度じゃない。
が、まあ実際、過大評価という意見にはオレも同意だ。
「オレは特別なことは何もしてないぞ。だからおまえに教えられることも何もない」
「私もそう思うんだけど、でもこの星、実際ちょっと異常なのよね」
「異常? どういうことだ」
「この星には鉱石力が充満してるって話はもういいわね。以前話した通り、これは地下に鉱石でできた層があって、そこから発生してるエネルギーなんだけど。この鉱石力が、私が君をここに転生させた頃よりずいぶんと増えてるのよ」
「それは――つまりどういうことだ? 普通は増えないのか?」
増えると何か問題があるのだろうか?
爆発する――とかないよな?
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