第68話 森の探索、そして構築の旅へ
翌日。
オレは狼姿のハクに乗って、グノー村の先、ディーネ湖の上に位置する未開の地へと向かった。
ラテス村とグノー村の間の森には風精霊たちが暮らすエリアがあるため、その場所を侵害しないよう避けて進むことにした。
ハクの背中で、その先にあってほしい世界をできる限り詳細に思い描く。
太い木が生い茂り、大きな岩場や崖があり、洞窟や小川、滝なども見られる場所。
岩場や木々の隙間からは湧き水が流れていてほしい。
それから――
そんなことを考えながら進んでいくと、次第に森の木の密度が上がっていった。
足元も、土や枯れ葉だけの進みやすい場所から、ゴツゴツとした岩や太い木の根が行く手を阻む荒れた獣道に変化し、周囲には崖や岩でできた洞窟も現れ始めた。
「ここから先は飛ぶとうねってご主人様を振り落としてしまいそうなので、足でゆっくり進みますね」
「お、おう。怪我しないように気をつけて進めよ」
――これはすごいな。
目の前には、オレが思い描いた理想の森が広がっていた。
木々が広げる枝や葉が光を遮り、影となって周囲を薄暗く染めている。
上を見ると、揺れる葉の隙間から木漏れ日がチラチラと光り、この森と外の世界が繋がっていることを教えてくれる。
「だいぶ深いですね。ご主人様は、自然がお好きですよね」
「ずっとコンクリートに囲まれて生きてきたからな。こうして自然と触れ合いながら生きられるのが嬉しくて」
「そうなんですね。でも僕は【何でもしてくれるモフモフ】なのでこれくらい平気ですが、人族がここを通るのは危険なのでは?」
「そうだな。でも、危険だからこその達成感もあるんだよ」
「そういうものなんですか」
ハクは、もはや岩の連続となっている道をひょいひょい進みながら周囲を見渡す。
岩の隙間にはどこから来るのかチョロチョロと水が流れていて、その水音がより大自然の中にいるという気持ちを高ぶらせる。
「ハク、疲れただろ。あの洞窟のあたりで一休みしようか」
「はいっ」
しばらく行くと上に聳える崖が現れ、その一部が抉られてできたような洞窟が発見された。
奥は深くて見えないが、生き物が自然発生しないこの星なら突然猛獣が出てくる心配もないだろう。
オレとハクは、そこで自然を眺めながら昼食をとることにした。
こうしてハクと長い間探索するのは初めてだし、もちろん大事な神様活動ではあるが、1つのイベントとして楽しみたいし楽しませたいという気持ちもあったのだ。
今日の昼食は、おにぎりと卵焼き、唐揚げ、にんじんとほうれん草の胡麻和えと、「THE☆お弁当」といった内容にしてみた。
ちなみにおにぎりは焼き鮭、梅干し、昆布、それからシルヴァお手製の味噌漬けチーズを刻んで醤油、鰹節と和えたもの。
ちなみに梅干しや醤油、鰹節は、以前シルヴァに渡したら感動して研究を重ねていたらしく、いつの間にか店頭に並ぶようになっていた。ありがたい。
地球にいた頃食べていたものは、今では大抵こちらの世界で手に入る。
オレは炭酸水と水精霊のアクアに貰ったオリジナルコンポートを取り出し、フルーツサイダーを作った。
アクアのコンポートは美しい青色をしていて、水色の透き通った不思議な果実がたくさん入っている。
炭酸水と混ぜると、透明度の増した青色にまるで小さなビー玉のような果実、それからキラキラとした炭酸の泡が輝きとても綺麗だ。
味は爽やかさのあるゆったりとした甘さで、クセもなくご飯と合わせて飲んでも邪魔にならない味わい。
以前シルヴァにもらった色の変わるハーブティー、マロウティーにマスカットを合わせたような味だなと感じた。
「おいしいですね」
「そうだな。幸せだな」
食べ終わって少し休憩したら、もう少し先にも行ってみよう。
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