第65話 モフモフは精霊界でも人気らしい

 案内に戻ると、森精霊のシルヴァとフォレス、水精霊のアクア、それから風精霊の数名がハクと談笑していた。

 シルヴァとフォレスは、日用品店と村の食糧管理という仕事柄仲が良く、商品の試食会も兼ねて2人主催で小さな茶会を開くこともよくあるらしい。


「ハルト様、さっそく素敵な会を開催してくれてありがとうございます。今日はナッツのはちみつ漬けとジャムを数種類、それからきのこのハーブオイル漬けを持ってきましたわ」

「あたしは採れたての果物とハムを何種類か持ってきたよ」

「いつもはグノー村あたりまでしか行かないから、こっちに来るのは久々だわ。わたしはオリジナルコンポートを持ってきましたよ」

「神様こんにちは! 私たちはフォレスの収穫を手伝ったよー! 料理はまだ練習中なんだ、ごめんね!」


 精霊たちはそれぞれ、オレに気づくと挨拶がてら持ってきたものや手伝ったことを話してくれた。


「ありがとうございます。焼き菓子やパン、軽食はこちらでも用意してるので、ご自由に召し上がってください。お持ちいただいた料理は一度こちらで預かって、のちほどあちらのテーブルに並べますね」

「あら素敵ね。アクア、フォレス、行きましょう。ハク、またあとでね」

「はい。あ、お席までご案内しますっ」


 シルヴァたちは、ハクに連れられてテーブルの方へと向かっていった。

 こうして徐々に精霊とそれぞれが持ち寄った料理が集まり、11時半を過ぎるころにようやく全員が到着した。

 精霊たちの料理も並べ終え、フィーネも席に案内して、オレは玄関先の少し段になって高くなっているところへ上がって挨拶をする。


「皆さま、今日はお集まりいただきありがとうございます。日ごろから交流のある方々もいらっしゃるとは思いますが、この機会に改めて親睦を深めていただければと思います。軽食や皆さまにお持ちいただいた料理、ドリンク類はご自由にお取りください。それでは――楽しい時間を過ごしましょう!」


 精霊たちが来てから、何だかんだで1年半近くが経とうとしている。

 この間に社交的な精霊たちは既に横の繋がりを作っており、そうした精霊たちが仲間同士を紹介し合うことで交流会はスムーズに進んでいった。


 ハクもハク自身は人見知りでどちらかといえば大人しい性格だが、人形のような愛らしさと誠実さで人気を得ているようで、会が始まるとあっという間に囲まれてしまった。


「あ、あのっ、僕は給仕係をっ……」

「まあまあいいじゃない。ほらハク、これおいしそうよ。あーん」

「えっ、いえ、あの……むぐ」

「あはっ、耳が困ってるかわいーっ!」

「ひゃうっ! み、耳をそんなに触らないでくださいっ」


 戸惑うハクと、それを楽しむ女性陣の声が聞こえてきた。

 こういう女性に束になられると勝ち目がなくなるのは、どの世界でも同じらしい。

 ハク、頑張れ!


 フィーネも開始すぐは1人おろおろしていたが、人懐っこい風精霊に声をかけられたことが輪に入るきっかけとなり、そこからは無事ぼっちから離脱した。


 とはいえ。

 あの駄女神を1人にしておくとボロを出しかねない。

 できれば今後もフィーネにちょこちょこ顔を出してもらおうと思っているため、オレも精霊たちへの挨拶ついでにさりげなく様子を窺いに行くことにした。


 オレがフィーネのいるテーブルの方へ向かうと、フィーネの視線がオレを捉え、心なしかホッとした表情を見せた。

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