第63話 星を完成させるそのために――

「――へ?」

「おいしいものもいっぱいあると思うし、もしかしたら仕入れたい商品も見つかるかもしれないぞ」

「え? 私!?」


 茶会に誘うと、フィーネはなぜかものすごく驚きうろたえ始めた。


「べつに嫌なら無理にとは言わないけど」

「う、ううん、嫌なわけじゃないの。ただ一般神族にそんなさらっとお茶に誘われるなんて初めてで、ちょっとびっくりしたっていうか」

「あー、そういう。悪かったな名門じゃないのに誘って」

「ああっ違うの! そういうことじゃなくて! その……」

「うん?」


 いつもは堂々との域を超えて厚かましいフィーネが、なぜかもじもじし始めた。


「……普段、私たち名門神族は、一般神族の集まりには呼んでもらえないし行けないの。見えない壁があるっていうか、私たちが行くと静まり返るっていうか……。だからその、嬉しくて。もし本当に行ってもいいなら行きたいなって……思ってるんだけど……」


 嫌がるどころか、フィーネはめちゃくちゃ行きたがっていた。

 頬を赤らめ、ソワソワしながらオレの反応を窺っている。


 ――これは予想外だったな。

 でもそうか、まあそうだよな。

 本来、気軽に誘える相手じゃないんだろうな。


 でもそんなに行きたがってくれるなら、こっちとしては今さら断る理由もない。


「じゃあ来いよ。お偉い女神だってことは伏せた方が良さそうだから、オレの友人って設定でいいよな」

「いいわよ。どんな服で行ったらいい? この間ちょうどドレスを買ったところだから、何でもいいならそれで行こうかなって」

「いやいや、頼むから普通の服で来てくれ」


「そう? じゃあ……ひざ丈くらいの白いワンピースはどう?」

「おお、そうだな。そういうのがいいんじゃないか?」

「ちなみにいつやるのかしら」

「まだ企画段階だから日程は決まってないかな。決まったら言うよ」

「分かったわ。私も何か持っていけたら持っていくわね」


 フィーネはワクワクした様子で帰っていった。


 ――こんなに喜んでくれるとは思わなかったな。


「一緒に楽しい茶会にしような、ハク」

「! は、はいっ!」


 招待状として一応DMは送るが、精霊たちとはほとんど話がついている。

 これから日程を調整して、こちらで出すメニューをある程度決めて、庭にテーブルを用意して――

 あとは精霊たちがそれぞれ持ってきてくれるものを並べればいいよな。


 今回の茶会開催の目的は、各精霊が持つ文化をオレがもっと学びたい、というところにある。

 もっと価値のある技術や文化が眠ってるかもしれないし。

 あとはまだあまり交流のない精霊たちとの顔合わせと、親交を深めること。


 森精霊32名、水精霊8名、風精霊20名――総勢60名。

 これから星の構築を行なっていくうえで、精霊たちの力が絶対に必要になってくる。

 精霊たちも、それぞれ誰がどんなことが得意かを知っていた方が互いのためになるだろう。


 とりあえず直近の目標は、ラテスの森のもう少し先に洞窟や小川、滝のあるゾーンを構築することと、山を作ること、あと土精霊と炎精霊を呼ぶこと。

 それからもう100名ほど人族も増やしたい。


 ――これまで神様活動は1人でやらなきゃいけないと思ってたけど。

 でもよく考えたら、神様ってそういうことじゃないよな。

 基礎を作るのはオレでも、そこから発展させるのは住民たちだ。

 ある程度星として軌道に乗ってきたら、あとはオレは見守るポジションに移行した方がいいのだろう。


 星が完成したら、オレも1人の住民として自由に冒険してみたい。

【異界への門】や飛行での旅もいいけど、やっぱり自分が育てた星の絶景は自分の足で回りたいなと思っている。


 できればハクと一緒に。

 フィーネも――まあ来たいって言ったら連れていってやろう。

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