第62話 フィーネ呼出ボタンと今後のこと
ラテス国では精霊同士の交流が少しずつ盛んになり、人族と精霊の間でも特産品の売買がすっかり普通になった。
人族にとって、精霊たちが作った特産品は特別な時に使う贅沢品ではある。
しかしそうした特別感が、精霊たちの存在をより「手を出してはいけない領域」として意識させる結果となった。
言ってしまえば、「精霊」のブランディングに見事成功したのだ。
精霊たちが作るものには自然と精霊の力が宿るため、人族がいくら同じものを作ろうとしても決してマネすることはできない。
一方、精霊たちにとっても人族の商品は目新しく、それを所有していることが一種のステータスになるなどいわゆる「レアアイテム」化していた。
精霊は基本的に自給自足の生活を送るのが一般的らしく、こうして他種族が作ったものを手に取る機会は今までなかったと話していた。
また、天空の神殿に住む天使たちも、たまにこっそり人族に扮し買い物を楽しんでいるようだった。
人族たちの記憶に残らないようスキルを使い、それぞれに渡している強化ガラス端末の電子マネーで支払いを済ませる。
こうすることで、金銭のやり取りだけが残る仕組みだ。
――そろそろ、もう少し住民を増やすのもアリかもな。
ああでもその前に、森のこととかいろいろとフィーネにも聞かないと。
たしかオレからも呼び出せるようになったんだっけ?
ステータス画面のどっかにボタンを表示させとくって言ってたな……
【可愛くて偉い女神様の知恵を借りる】
――ほう。
なるほど頭の悪い嫌がらせか何かかな。
オレはフィーネが現れるまで、そのボタンを勢いよく連打し続けた。
「ちょっとうるさいんですけど!? 1回押せば分かるわよ馬鹿なの!?」
「おおフィーネ。おまえか。頭の悪そうなボタンがあったから何だろうと思ってな」
「なっ――どう見ても私を呼ぶボタンでしょ! というか今頭の悪そうなって言った!?」
フィーネは本当、いつ見ても元気だな。
これだけエネルギーをまき散らしてるわけだし、ある意味神様としては正解なのかもしれない。
「そんなことよりフィーネ、ちょっと相談があってさ」
「そんなこと――それが人に相談する時の態度なの!?」
「そろそろラテスの領域を広げていこうと思ってるんだけど、オレが創った森を森精霊たちに自由にデザインしてもらうって可能なのか?」
「……まあ、可能よそれは。というか君が全部作るなんて無理でしょ」
フィーネは不服そうにしながらも、質問にはちゃんと答えてくれた。
やっぱりそういうものなのか。
「それから、人族をもう少し増やそうと思ってる」
「いいんじゃない? たった100人から増えるのを待つのも大変だし。複数の文化があった方が発達も早まるでしょうしね。でも相性をよく見て選びなさいね。ぶつかり合ってどっちも滅びるなんてよくあることだから」
「そ、そうか。そうだよな」
フィーネは幼いころから多くの星を見てきてるっていうし、やっぱりいいことばかりじゃなかったんだろうな……。
オレも、せっかくここまで発展させたのに、争いで滅びるなんて悲しい運命にはさせたくない。
「参考になったよ。ありがとな。――ああ、それと」
「?」
「今度ハクと協力して、精霊たちの特産品を持ち寄る交流会――というか茶会を開こうと思ってるんだ。せっかくだしフィーネも来ないか?」
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