第60話 フルーツティーとハクの嫉妬
地球の絶景を集めてまわったあとも、オレはいろんな星を見てまわった。
異界の星には、地球では絶対に見られない光景もたくさんあった。
陸地がなく地表はすべて海で、住居が雲の上にある世界。
人族と魚のハーフ――いわゆる人魚が主な住民で、水中都市が発展している世界。
地表が水晶などの鉱物でできている世界。
島が空を飛び移動する世界。
ずっと夜の世界や、ずっと昼の世界。
そのほかにも獣人やエルフが暮らす世界、魔法の発達している世界など、どの星も同じものは1つもなく、それぞれ独自の文化を築いていた。
――そうか。
世界構築ってこんなに自由なのか。
まあそうだよな。理から改変できるんだしな。
遺跡みたいな場所もあると個人的にはワクワクするけど、遺跡ができるには文明が発達してそれが廃れなければならない。
まだ出来上がってすらいないこの星に求めるものではないだろう。
遺跡風、ということならできなくはないだろうけど……うーん。
森も、もっと鬱蒼とした場所もあっていいと思うんだよな。
木の幹や岩に苔が張りついて緑に染まっているような、そういう場所。
腐って折れた木を栄養に植物が育っている景色もまた、歴史を感じさせる趣がある。
――そういう区域も作りたいなあ。
オレは【記憶ショット】で集めた風景を眺めながら、このラテスをどういう星にしていこうかと【ラテスの地図】を睨み奮闘していた。
「ご主人様、頑張ってますね。でもあまり根を詰めすぎると体に悪いです。フルーツティーを入れたので、少し休憩しては?」
「――ん、そうだな。ありがとうハク。というかフルーツティー?」
「ご主人様が留守の間に、森精霊のシルヴァさんが紅茶をくださって、フルーツティーの作り方を教えてくれました」
「おお。そうだったのか。今度お礼しなきゃな。シルヴァさんの作る瓶詰めうまいし、また買いに行こうか」
フルーツティーは、華やかさのある香りの良い紅茶にモモリンのフルーティーな甘酸っぱさをプラスした、とても飲みやすくおいしいものだった。
――へえ。モモリンってこういう使い方もできるのか。
というかフルーツティーなんて初めて飲んだな。でもうまい。
「モモリンジャムやオレン果汁を入れてもおいしいって言ってましたよ」
「今度フィーネにも教えてやろう」
「……そういえば、最近フィーネ様と仲良しですよね」
「うん? ああ、ちょっと神界でいろいろあってな」
「い、いろいろ……」
まあ仲良しというか、オレがフィーネの弱点を握っただけなんだけど。
でも、ハクはなぜか戸惑っているような浮かない顔で何か考えている。
「どうした?」
「い、いえ……」
――うん? なんだ?
いつも基本無表情なのに、ハクがこんな表情を見せるなんて珍しいな。
「言いたいこととか聞きたいことがあるなら言っていいんだぞ」
「え……う。…………い」
「い?」
「いろいろ、とは、何ですかっ」
ハクは決死の覚悟をしたような勢いでそう口にした。
ええええ。
こ、これはもしかして――
「ハク、おまえ妬いてるのか?」
「え! い、いえそんな、そんなことは決して……」
おお、当たりか。なんだ可愛いな。
普段無表情なくせに、そんなにオレに懐いてくれてたのか。
「べつに大したことじゃないよ。オレの転生はフィーネの間違いから起こったことだったらしくてな。それが親にバレてごたごたしてたからオレが収めてやったんだよ。まあ早い話が、フィーネの弱点を握ったってことだな」
「じ、弱点……」
ハクはポカンとし、それから赤面して俯きぷるぷると震えだした。
「いったいオレとフィーネの間に何があったと思ったんだ? ん?」
「べ、べつに何も! 何も思ってませんっ!」
「えー? 本当かー? ご主人様に嘘はよくないぞ」
「ほ、本当ですっ! 僕はただ、モフモフとしてご主人様のことを知っておこうと思っただけでっ!」
「はは、まあそういうことにしといてやるよ」
「う~~~~っ!!」
こうしてこの日、オレはハクの意外な一面を目撃したのだった。
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