第55話 フィーネの母親からの呼び出し

『モモリンだけど、母様に相談したら早速買い手が見つかったらしいわ』

「早いな!?」

『それで、1㎏――まあ平均3~5個くらいね。それで1000Gくらいでどうかしら』

「そんなに!? 卸値だよな?」

『そうよ。量が増えてきたらもう少し下がるかもしれないけど、今はこの価格で十分いけるわ。家族で試食して、うちの食事にも取り入れることになったの』


 モモリンすげえ。

 もっとちゃんとした名前つけとくんだった……。


『それからオレンとイチゴ、ブカンだけど――』


 フィーネはそれぞれの卸値を丁寧に説明してくれた。

 ちなみにブカンとは、ミカンのような形状をした、ブドウのような果肉が詰まった果実のことだ。

 こうしてラテス国から、モモリン、オレン、イチゴ、ブカンを含めた10種類の果実を神界に卸すことが決まった。


『あ、あとね、その……』

「うん?」

『母様が君に会いたがってて……』

「……うん!?」


 あれ?

 そういえば、オレの存在ってフィーネの家族に内緒なんじゃなかったか?


『その……モモリンのおいしさに舞い上がって、君の存在内緒ってことすっかり忘れててね。名前をぽろっとこぼしたら姉様に気づかれて、母様と父様にもばれちゃって。連れてきなさいって』

「……ええ。おまえやっぱり馬鹿だろ」


 ここ最近、フィーネは案外まともなヤツなのではと思い始めていたが。

 どうやら残念なのはオレの勘違いではなかったらしい。


『ねえお願い! うちに来て母様に会って!? そしてフィーネのおかげで転生前より幸せに暮らしてますって言って! 言ってくださいお願いします! じゃないと私――罰は嫌ああああっ……うぅっ、ふえっ……ぐすっ』

「えええええええ」


 フィーネは突然泣き出してしまった。


「おい落ち着けよ。分かった会うから。会って幸せだって言えばいいんだろ!?」

『ほ、本当……?』

「ああ。まあ実際、おまえには何かとお世話になってるし。前世より今の方が充実してて楽しいしな」

『そ、そうよね! 君、元ブラック企業の社畜だもんね!』

「おい会うのやめるぞ」

『ああ待って! 違うの。あれよね、素直で優秀だったから使い潰され……じゃなかった、重宝されてたのよねっ!』


 お世辞下手くそかこの残念女神め。


「……はあ。まあいいけど。で、オレはどうしたらいいんだ?」

『今から【神殿への門】を送るから、そこから来て』

「ハクは?」

『ハクは置いてきて。今の君なら5日くらいなら星を離れても平気なはずだけど、一応君が不在の間ハクに守ってもらわなきゃいけないから』

「わ、分かった。じゃあハクに伝えてから行くよ」

『待ってるから絶対来てね! 来なかったら許さないからっ』

「分かったから……」


 オレはいったん天空の神殿へと向かい、ハクと天使たちにフィーネに呼ばれて神界へ行くと話をした。

 ハクも天使たちも驚いていたが、何も言わず送り出してくれた。


 ――はあ。じゃあ行くか。


 オレは【神殿への門】を開け、その先へと足を踏み入れた。

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