第54話 神界にモモリンを卸すにあたって
「このモモリンのほかにも特産物ってあるの?」
「あー、そうだな……」
特産物って今決めただけだしなあ。
ほかはオレンとイチゴと……なんかほかにもいろいろあるな。
特産物かは知らんけど。
「というかオレほかの星のこと知らないし、ここにある何がどれくらいの価値があるかなんて分からないんだが」
「……そっか。それもそうね。うーん」
フィーネは真剣な様子で何やら考えている。
「この土地で豊富に実る果実で良さげなものを、いくつかリストにするよ。それをおまえが試食して、神界に卸す価値があるかどうか見極めてくれ」
「それいいわね。そうしましょう。ちなみにモモリンは1㎏あたりいくらぐらいで卸してくれる?」
「……その辺のことは、できればおまえに任せたい」
神界の物価や相場なんてオレにはまったく分からないし。
「い、いいの?」
「どうせ余っても捨てることになるわけだし、いいよ」
フィーネは残念なところはあるが、悪いヤツではない。
きっと悪いようにはしないだろう。
「それなら、この【転送BOX】を使って。ここに入れれば自動で私の【アイテムBOX】に転送されるわ」
フィーネはそう言って、テーブルに白い陶器のような材質でできた電子レンジくらいの直方体を設置した。
側面には美しい装飾が施してありしっかりしているのに、陶器のような見た目なのに、上の面だけ不思議と波打っている。なんだこれ。
「もちろん、買い取った分は個数と金額を明確にして所持金として還元するわ。もし異論がある場合はそこから交渉しましょう」
「分かった」
フィーネは【転送BOX】なる謎の箱を置いて、また姿を消してしまった。
住民に還元すれば住民の懐も潤うし、せっかくなら話をしてみるか。
もしかしたら、ほかにも余らせてる家があるかもしれないしな。
それから、稼いだ金を使う先も考えないとな。
せっかく頑張って貯めても、使う先がなかったらつまらないだろうし。
やっぱり急いで世界を構築――というか広げる必要がありそうだ。
まあでも……
「ハク、このもらった果物、適当に詰め合わせて神殿の天使たちに持ってってくれ。フィーネが喜ぶような物ならきっと天使たちも喜ぶんじゃないかな」
「はいっ」
ほとんど放置状態の神殿をしっかり守ってくれている天使たちにも、この土地の実りをちゃんと還元したい。
というかあの神殿も本当、もうちょっと活用しないとな。
オレはとりあえずある程度数が確保できそうな果実をリスト化し、自分では消化しきれないものを【転送BOX】に入れてみた。
それから、強化ガラス端末に流すお知らせを作成する。
これはこの1年の間に考えた新機能で、強化ガラス端末を持つ者に自動でいわゆるDMを流せる機能だ。
それまでは全員召集するかオレやハクで村をまわる必要があったが、この機能を追加してからは一通送信するだけですべてが済むようになり、大助かりしている。
お知らせを送信すると、各強化ガラス端末のアイテムBOX機能を通して次々と果実が集まり出した。
――よっしこれはいいぞ!
強化ガラス端末についているアイテムBOX機能には時を止める機能はないが、神様アイテムとしての【アイテムBOX】の中は時が止まる仕組みになっている。
そのため、そっちに移動してしまえば集めた果実が腐ることもなくなる。
『神乃悠斗くん、ちょっといいかしら』
「!? お、おう……」
この歳で突然フルネームで呼ばれると驚くな……。
言う間でもないが、声の主はフィーネだ。
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