第53話 神界にモモリンを卸すことになった
この世界の【世界地図】が自分の創造によって決まると知ってから、オレはポイントを使って様々な風景写真集や画集を入手した。
このままでは、この星ラテスのすべてが森と草原で終わりかねない。
どうせなら、もっと洞窟とか氷の大地とか、そういうのも欲しい。
創造すればいいってことは、もっとファンタジーな世界もありなのかな?
宝石でできた森とか、潜れる海とか、回復の泉とか。
ラテスの森は人族は入れないし、人族にももっと楽しめる場所が必要だろう。
村もだいぶ充実してきたしな。
それと……
ここ最近直面しているもう1つの問題がある。
「領主さま! こちら採れたての野菜です。どうぞお納めください」
「領主さま! おかげさまでこんなに立派な果実が実りました。こんな生活ができるのも領主さまのおかげです。どうか献上させていただけないでしょうか?」
「あ、ありがとう……」
最近、うちに次々と収穫物が集まりだしたのだ。
それはとても嬉しいことなんだけど。
オレ、ハクと2人暮らしなんだよおおおおお!
こんなに食えねえええええええ!!!
ちなみに人族からだけでなく、精霊たちからも集まってくる。
「これは……どうしましょうね。ご主人様が人気者なのは誇らしいことではありますけど」
ラテスはとても土地が豊からしく、オレにお裾分けをくれても、住民たちも餓えることなく暮らせている。
というかまだ1年だぞ!?
こんなに豊作って有り得るのか??
「ご主人様がこの土地に留まっていることも影響しているのかもしれませんね」
「え!?」
「ご主人様がいることで、ここは今神域でもあるんです。元々の鉱石力と精霊たちの力、それに神様の力が加わっているわけですから、むしろ豊かでない方がおかしいです」
――そ、そうだった。
最近オレ、完全に領主になってたわ……。
うーん。
神殿の天使たちにお裾分けしても余るしな。
フィーネは……あいつはお嬢様らしいし、こんなん渡されても困るよな。
「えーっ、なになに? すごい人気じゃない!? これ全部捧げ物?」
「いや、捧げ物っていうか――ってうわっ! おまっ、いきなり現れるなって言っただろ!」
「だってなんか考え事してたから」
「――ったく。まあいいや。来たならおまえも食え」
「……へ? え、いや、私は――むぐ」
オレはちょうど切って皿に盛っていたモモリンをフィーネの口につっこむ。
「!? な、なにこれ!?」
「この土地の特産品、モモリンだ」
「えっ? えっ? すっごくおいしいんですけど!?」
「え? そうか、それはよかった」
「ねえ、これ、神界に卸さない?」
「……は!?」
「どうせ余ってるんでしょ? いいじゃない!」
「いやオレはべつにいいけど、神界はもっとなんかいろいろあるんじゃないのか?」
「もちろん神界にもおいしいものはたくさんあるけど。そう思ってたけど。でもこれは格別よ! 私が言うんだから間違いないわ」
「すごい自信だなおい」
「私は名門神族よ? 毎日厳選されたおいしいものしか食べてないわ。そんな私が言うんだから、それはもう絶対なのよ!」
……神様も贅を尽くすとかあるんだな。
まあ、フィーネだしな。
「うふふ見てなさい姉様母様父様! 私もやればできるって証明してみせるわ!」
フィーネは何やらぶつぶつ呟いている。
「まあ、有効に使ってもらえるならこっちとしても助かるよ」
「交渉成立ねっ!」
こうしてオレは、ラテスの特産品(ということになった)モモリンを神界に卸すことになったのだった。
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