第52話 神様の「創造」にも資料はいる!
「確かめるも何も、そもそも存在していないんです。虚無です。例えるなら、今は真っ白い画用紙にラテスという国の一部を書き記したところ、という感じです」
――存在、してない?
「いやでも、グノー村の先なんて行ったことなかったけど、そこにディーネ湖がちゃんと――あ」
いや、あの時たしか、この近辺に綺麗な湖があればいいのに、と願った。
それにグノー村のすぐ近くだったにも関わらず、あんなに大きな湖が存在していたにも関わらず、オレがあの湖を発見するまで森精霊たちはまったくそのことに触れていなかった。
まるでそれまで見えていなかったかのように。
最初、ハクがまだ来る前に体を休めた大きな木もそうだった。
雨が降っても大丈夫そうな大きな木があったらいいな、と願ったのだ。
でも、食べ物に関しては?
オレは食料を求めてそれなりに森の中を歩いたが、その段階では実のなる木は生まれなかった。
実のなる木ができたのは、【理の改変】でオレが理を変えたからだ。
――いや、最初に目を開けて頭上に木を見たとき、オレは森だとは思ったが果実を思い描かなかった。かもしれない。
都会生まれ都会育ちであったオレの森のイメージは、ひたすら木が生い茂った樹海のような場所で、あとは川が流れてそうくらいの知識量で。
デスマ真っただ中で思考もぐだぐだになっていたオレに、それ以上の何かを思い描けるわけもなかった。
あれは、あの食べ物のない状況は、オレのせいだったのか……。
恐らく、一度生み出してしまった世界は【理の改変】を使わなければ変えられないのだろう。
「じゃあもしかして、オレがこの辺にこんな光景が広がっててほしい、と思ったらその通りになるってことなのか?」
「そうです。スタート地点は少しだけフィーネ様が創っていたはずですが、それ以外はすべてご主人様の創造によるものですし、これからもそれは変わりません」
めちゃくちゃ責任重大だな!?
オレの貧相で粗雑な想像力で世界が決まるって怖すぎるんだが……。
あの無限ポイントで風景写真集でも買い揃えるか?
前の世界のものを使いすぎると神様としてはマイナスだと言っていたが、参考資料にするくらいは別に問題ないだろう。
何事も勉強は必要だ。
「……そういや、ハクには何かないのか?」
「えっ?」
「こんな場所があったらいいな、とか、そういうの」
「えっと……僕は神様ではなく、あくまで神様に仕える神獣でありアイテムなので、創造に口を挟むことは許されてません。ごめんなさい」
「そうなのか……」
まあ、許可されてないことを無理強いするのは可哀相か。
じゃあやっぱり、風景写真集をいくつか取り寄せよう。
あとはまあ、今後この世界をどうしていくかも考えないとな。
どんな住民を増やしたいか、どんな星にしたいかを先に考えないと、思いつきで創っていたら支離滅裂な世界になってしまいそうだ。
……うん。【世界地図】必要だな!
使えないとか思ってごめんフィーネ!!
オレは先を開拓する前に、資料を読み込んで自身の知識量を増やすことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます