第51話 星の開拓ってそういう!?

 ラテス村を作り、人族がやってきてから1年ほど経った。

 強化ガラス端末を使った電子マネーの文化はすっかり浸透し、人族の中にもお店を開業し、自身の商品で商売をする者が現れた。


 元奴隷とはいってもそれ以前は普通に人として暮らしていたわけで、環境が整えば何もできないわけじゃない。

 文字も読めるし計算もできる。

 それは、【救済措置候補者カタログ】から召喚した大きなメリットだった。


 村には、オレが管理している精霊たちの商品が並ぶ店と、人族が直接管理している店が混在している。

 どちらにもそれぞれの良さがあり、精霊たちも人族が作った商品に興味を持つようになっていった。


 ――人族の商品を精霊たちが購入するようになれば、生活の幅が広がるし経済的にも潤うよな。

 何かネットショップ的なものを作るか?


 が、ラテスの森に人族は入れない。

 森の外で受け渡しすることは不可能ではないが、そうやって人族と精霊たちが交流を始めるとまた別の問題が発生する。


 ラテス村に住む人族にとって、精霊は畏怖の対象で。

 実際、精霊たちは人知を超えた力を使う。

 人族と精霊の生活圏は、どちらのためにもごちゃ混ぜにしないのが得策だろう。


 人族と精霊に共通しているのは、オレが普及させた強化ガラス端末と電子マネー。

 これを使ってどうにか――あ。


 ――強化ガラス端末にアイテムBOX機能をつけて、端末から物を取り出せるようにすればいいんじゃないか?

 そしてお金を払って相手が了承すれば、売買が成立してアイテムBOX内の物の所有権も譲渡できることにすれば――


 あれ、オレ天才じゃね?


 オレは【理の改変】で強化ガラス端末にこうした新機能をつけ、ネットショップもどきの基盤を完成させた。


「なるほど……。ご主人様すごいですっ」

「そ、そうかな。ありがと。まあ、神様カタログの模倣だけどな」

「こんなに積極的に星を繁栄させようとする神様、初めて見ました」

「ええ、そうなのか」


 いや、それはそれでどうなんだと思うけど。

 住民を連れてきた以上、やっぱりこの星にきてよかったと思ってほしい――と思うのは普通じゃないか?


「ご主人様はなぜかランクCに上がった今でも星に一緒に住まれてますが、本来星はあくまで運用していく商売道具というのが一般的な考えなんです。ランクEを除いて、ですけど」


 たしかにランクEの段階では天空の神殿もなかったし、この星に住むものとしてここに連れてこられたと思っていた。


「でもこの星ほとんど未開拓だし、自分で開拓していかないとそもそも全貌すら分からないんだが。みんなどうやって、星に住まずに把握してるんだ?」


 実際、今いるラテス国以外がどうなっているのか一切分かっていない。


 そう。分かっていないのだと思っていた。

 しかし――


 オレはここで、今まで大きな勘違いをしていたのだと知ることになる。


「えっ?」


 ハクは驚いたような顔でオレを見て、何やら言いよどんでいる。

 ……何か変なことを言っただろうか?


「前、オレが認知しないとないのと同じって言ってただろ。だから、自分でどうなってるのか確かめる必要があると思ってるんだが……違うのか?」

「……ご、ごめんなさい。そういうふうに受け取っていたんですね。そうじゃなくて、この星の世界地図はご主人様が創造していくものなんです」


 ――は?


「え、つまり?」

「確かめるも何も、そもそも存在していないんです。虚無です。例えるなら、今は真っ白い画用紙にラテスの一部を書き記したところ、という感じです」


 なん……だって……?

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