第50話 手違い――のはずだったけれど【フィーネside】
私は手違いで辺境の【完全未開拓惑星】に転生させられてしまった憐れな人族――神乃悠斗の様子を確認するため、度々【神鏡】を覗いていた。
神ランクA以上の神族は、自分の管理下にあるすべての星を【神鏡】で自由に見ることができるのだ。
初日からステーキを食べるような無計画な人族だったし、きっと【何でもしてくれるモフモフ】に頼って何もしてないんだろうな。
まあ本人が幸せならそれでいいけどね……。
そう思っていたけれど。
――ん? え?
神乃悠斗は、なぜかモフモフに名前をつけ、気遣い、モフモフに意見をもらいながら自分で動き始めたのだ。
えええええ?
というかハクって。
アイテムに名前つけて可愛がるなんて。
相変わらず、人族は何を考えているのか分からない。
でも――
こいつ意外といいヤツね……。
なんかモフモフも妙に懐いてるし。
というか突然あんな場所に放置されたら、普通はもっと怒ったり絶望したりするものじゃないの?
間違った救済をしてしまったと思ったけれど、この人族ならまあ、よかったかな。
神乃悠斗の頑張る姿を見て、私は何となく彼のことが気になり始めた。
そして神様アイテムやスキルを提供し、日々【神鏡】を覗くのが楽しみになった。
まあ、私のことを駄女神なんて言うのは許しがたいけどっ!!!
数日後、私は久々の長期休暇に入った。
長期休暇中は久々に姉様たちと別荘に行き、羽を伸ばして楽しんだ。
休暇中も、管理している星のどこかで何か緊急事態が起こった場合は分かるようになっている。
でも特に何も起こらなかったため、私は安心して過ごしていた。
休暇を終え、約1か月ぶりに【神鏡】を確認する。
すると神乃悠斗の星は、だいぶ充実していた。
――へえ、やるじゃない。
神乃悠斗は前の世界、つまり地球にいた頃に自身が使っていた家具や家電、雑貨などを買い集め、能力のなさを補填していた。
もっとモフモフ――いや、ハクだったっけ? あの子を頼ればいいのに。
名前をつけて、本来のアイテム名を忘れたのかしら。
……ん? え!?
もうLv.29ってどういうこと?
あれ、というかもうランクDに昇格してる!?
え、う、嘘でしょ……
どんだけ頑張り屋さんなのこの人族!?
……もしかして、ハクの扱い方が分からないのかしら。
だから自分が生きるために頑張っちゃったとか?
長期休暇中、いったい何があったのよ……。
とりあえず、こんなに頑張ったんだし何か報酬を渡さなきゃいけないわよね。
私はそう思い、【神様カタログ】に加えて【回復鉱石】と【転移ポイント】を用意し、彼の意識の中へと入りこんだ。
「おめでとう! 君の神様ランクが上がったわ」
「え? いや、ちょ……は?」
あれ、伝わらなかったかしら。
まあそうか、元々ただの人族だし、神界のことなんて分からないわよね。
私はそう思って1から説明し、【神様カタログ】を渡した。
「わ、分かった。でも、なんで……。オレはてっきり、おまえに見限られたのかと」
え? なんでこんなに頑張ってるのに見限るなんてこと――
――ああ、そうか。
この人族、元々ブラック企業で上司のパワハラとデスマに苦しんでたんだっけ。
もしかして私のこと、そういう上司と重ねてる?
普通は神様って実際以上に神格化されるものだけど……。
ふふ、面白い人族ねw
それに何というか――見ていると救われる気がする。
一般神族ですらない、転生者の成り上がりがこんなに頑張るなんて。
まあきっと人族のことだから、自身の生活環境を考えてのことなんでしょうけど。
でもそれでも、私という神の存在を認知していながら、モフモフを所持していながら自分でどうにかしようなんて見上げた根性だわ。
――よし。
私も名門神族として頑張らないと、ね。
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