第49話 名門神族フィーネの事情【フィーネside】
◆ ◆ ◆
名門神族の家系に生まれた私フィーネは、何不自由ない生活を保障され、それと同時にランクAの神族として生きる義務を課された。
物心つく前から、うちには多くの天使たちが仕えている。
家事や雑用などはすべてその天使たちがしてくれて、私は毎日勉強と訓練の日々を送ってきた。
両親も家庭教師もとても厳しく、べつに特別な才能があるわけでもない私は、幼いころは毎日のように泣いていた。
神族の寿命は半永久的と言われていてとても長い。
不死というわけではないけれど、何か重罪を犯して処刑されるか、生きるのに飽きて自死を選ぶかしなければ死ぬことはない。
神族は本来の役割上、長い時間をかけて多くのものを習得する必要があり、仕事も1つ1つが長期戦となる。
それ故にこうなったのかもしれない。
一般神族の多くは、学校を卒業するとそれぞれ星をもらい、それを管理しながら育てていく。
星をいくつ管理するかは自由で、複数所有して専業にする者もいれば、1つだけ管理しながら別の仕事と兼業する者もいる。
私たちランクAの神族も、もちろん星の管理は行なう。
それこそ幼少期から、当たり前のこととして行なう。
けれどそれは本来の仕事ではない。
これはあくまで勉強や研究の一環で、「うまくできて当然」のこと。
私たちの仕事は、そうした多くの下位の神族と数多ある星を結びつけ管理すること。
名門神族には、各家にそれぞれ割り当てられた「領域」と「専門」があり、その領域の管理と専門分野を任される。
ちなみにうちは、生と死を司る家系だ。
私には両親のほか、姉が2人いる。
どちらもいくつもの星を立派に育てながら、ランクBの神族も多く輩出している優等生。
でも私は――よその名門神族と比べれば特に落ちこぼれというわけではないけれど、これといって突出した功績もない。
私自身のことを言えばあまり出世欲はなく、ほどほどのラインで自由に暮らしたいというのが本音だけれど、家がそれを許してくれない。
私は、そんな中で生きている。
上の姉は、先日ついにランクSの天界神族へと昇格した。
神様アイテムや神界および天界のシステムを管理する、とても偉い神様だ。
ちなみに天界というのは、天使たちの暮らしている世界のことを指す。
正確には天界の中に神界があるのだけど、この2つは基本的に別の場所として扱われることが多い。
一般神族や転生者からなる下位ランクの神様は自由なもので、たとえ昇格しなくとも誰に咎められることもない。
そのためいくらこちらが星を当てがっても、お膳立てをしても、大抵はランクC止まり。
それでも困ることは何もないし、それがいけないことだともされていない。
私たち神族は、たとえ最上級のランクSSであっても「神様」だ。
どんな時も基本は「見守る」立場で、支配したり虐げたり何かを強制したりすることはできない。
名門神族は家を守りながら、家の繁栄ではなく世界の平和を望まなくてはならない。
もちろん、それをできるだけの優遇や権利も与えられてはいるけれど。
――あーあ。めんどくさい。一般神族が羨ましいな。
今回の転生者も、きっとランクEか、せいぜいランクD止まりで終わるだろう。
【救済措置候補者カタログ】を使ったはいいけど、発売前の未完成なものを手に取ってしまったうえ、ページ下の人族を救済召喚する予定が、うっかりよそ見をして手元が狂い、ページ上の人族を召喚してしまったのだ。
――姉様があんなところに作りかけのカタログなんて置いてるからっ!
おかげで私は悪くないのに予想外の出費がかさみ、万が一これがバレればどれだけ叱られるか分かったものじゃない。
神乃悠斗――か。
とりあえず罪滅ぼしに【何でもしてくれるモフモフ】を渡してみたけど、あんな辺境にあるセール品の星じゃあね。はあ。
まあ星をあてがったの私なんだけど。
でも、使い道が決まってなくてあいてる、私が好き勝手してもばれなさそうな星はあそこしかなかったのよね。
どうにかこの星で楽しんでもらうしかないか。
――そう考えていた時期が私にもありました。
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