第47話 電子マネー端末の配布が完了した
翌日。
しっかり休息を取った人族たちは、だいぶ元気を取り戻していた。
これから徐々に食事を消化が必要な普通の食事に変えていって、胃の機能が回復したらあとは任せよう。
オレとハクで朝食のおかゆを配給し、それから人族全員に集まってもらって話をすることにした。
「あなた方には、今日からこの村で生活してもらうことになります。当分の間はオレやハクが面倒を見ますが、いずれはあなた方で村として機能させてほしい。そこで、この端末を使用する電子マネーという通貨システムを導入します」
オレが見本となる端末を見せると、皆不思議そうにしつつも端末に注目する。
「これには電子マネーというお金が入っています。これを専用端末にかざすことで自動で支払いがなされる仕組みです。紛失時には再発行も可能ですが、端末もタダではないのでその際にはお金をいただきます。ここまでで何か質問はありますか?」
「あ、あの、私にはただの透明な板に見えるのですが……」
「端末は、森精霊たちに作ってもらった強化ガラスでできています。これに鉱石力を通すことで、情報を中に溜め込んだり引き出したりすることが可能なんですよ」
正直、自分でも何を言っているのか分からない。
しかし何を言っているか分からない非科学的なことも常識に変えてしまうのが、【理の改変】の力なのだ。神様ってすごいな!
「な、なるほど……?」
質問してくれた女性は、分かったような分からないような表情をしていたが、それ以上は突っ込んでこなかった。
自分の理解の範疇を超えていると理解したのだろう。
「初期段階では、50万マニ入れてあります。マニは通貨の単位です。宿に1泊するのがだいたい5000~1万マニ程度、アパートの家賃がワンルームで1か月5~7万マニ程度、食事一食が500~1500マニ程度、くらいの感覚だと思ってください」
オレはそう説明し、1人1人に端末を手渡していった。
厚み約1㎝、15㎝×7㎝程度の長方形の強化ガラスを手にし、皆興味深々だ。
「数秒手をかざすと、画面に現在の所持金が表示されます。支払い用の端末は、1店舗あたり数台を無償で提供します。それから、今はまだありませんが、端末の発行をする住民登録所や仕事の紹介所も作る予定です」
「そ、そんな難しそうなこと、俺たちにできるでしょうか……」
「やり方はお教えするので大丈夫ですよ」
こうしてオレは、ハクとともにラテス村を充実させていった。
最初はオレも人族たちも手探り状態だったが、ハクにアドバイスをもらいつつ、数か月ほどでどうにか村として機能させることに成功した。
住民たちはそれぞれ居住環境を整え、畑を作って作物を育て、食料確保に勤しんでいる。
また、村にはいくつか店もでき、食品や家具、雑貨など精霊たちの作った商品も並べられた。
仕事の紹介所にある掲示板には、必要な人材と条件、報酬を記入した求人がいくつも並んでいる。
その中には、いくつかオレが募集をかけたものもある。
住民たちは最初こそオレに怯えたりおどおどしたりしていたが、徐々に笑顔を見せるようになり、明るく前向きにそれぞれの生活を楽しむようになっていった。
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