第46話 通貨システムは電子マネーで!

 奴隷であった人族たちの傷を癒し、服を綺麗にしたところで、とりあえず食事と休息を取らせることにした。

 傷は治したが、体力を回復させる方法は今のところ回復鉱石しかないし、何より「休む」という行為自体も大切だ。


 食事はろくなものを食べていない様子だったため、とりあえずはおかゆにした。

 鶏肉の実でとった出汁と塩で味つけしたシンプルなものだが、皆喜んで食べてくれた。


 今はハクや森精霊たちが、事前に作っていた宿屋の部屋へ案内しているところだ。

 さすがに100名分の部屋は用意していなかったので、森精霊たちに布団を量産してもらい、部屋に敷き詰める形となった。


 ――雑魚寝ではあるけど、まあ布団さえあればこの際いいよな。

 宿屋はまだオレとハク以外足を踏み入れてないし、部屋には土足ではなく靴を脱いで上がったから床も綺麗なはずだ。


 今日はゆっくり休ませて、明日になったらラテスの森のこと、精霊たちのことを説明しよう。

 あとは――さすがにいつまでも物々交換だけってわけにもいかないし、通貨システムを考えなきゃな。


 オレが持ってる所持金は、この世界のものではなく神界で使われているものだ。

 だから1から作らなきゃならないけど――当然そんな知識オレにはない。


 まあ、金貨と銀貨と銅貨を作って様子を見るか。

 ……いや、いっそもう電子マネーにするか?

 認証システムも導入すれば、犯罪抑制にも繋がるかもしれない。


 住民登録をすることにして、それと引き換えに何らかの端末を渡せばいいかな。

 この星には鉱石力が充満してるらしいし、それを動力にすれば――。

 個人に流れるエネルギーと鉱石力を反応させるシステムにして、本人以外は見られない仕様にするってのもアリか。


 ――あれ、オレ天才じゃね?


 オレは早速、スキル【神様】と【理の改変】を使ってシステムを構築した。

 端末は今後いろいろな機能が追加できるようにと考えた結果、強化ガラスの板で作ったスマホのような形状のものになった。

 本人と紐づけているので、紛失時には端末だけ購入すればデータの移行も可能だ。


 ただ今後のことを考えると、情報を管理する場所と人員が必要になってくる。

 新規発行や紛失のたびにうちにやってこられたのでは、いずれ立ち行かなくなってしまうだろう。


 強化ガラス端末の製造は森精霊に依頼しよう。

 登録所はラテス村に作って、人員は人族の中から決める。

 雇用の創出にもなって一石二鳥だな。たぶん。


 とりあえず、最初はいくらか電子マネーを入れた状態で渡すことにしよう。

 当分の生活費がいるし。

 精霊たちから買い取った商品をラテス村で販売したいし、すぐには無理でもいずれはその逆も実現したい。


 オレは早速グノー村へと向かい、端末の製造を依頼した。

 森精霊たちの仕事の早さは相変わらずで、その日の夜にはきっちり100台、完璧な状態で納品された。

 そしてその際、長老フォーレが嬉しい提案をしてくれた。


「この端末と電子マネー?とやらは画期的ですな。できればグノー村でも使いたいんじゃが、いかがかな」

「ぜひ使ってください。いずれはラテス国全体で統一したいと思っていたので、大歓迎ですよ。精霊たちは既にそれぞれ財産があると思いますので、それを基に電子マネーを入れます」

「おお、それはありがたい。では電子マネー化したい分の所持金と引き換えに、ハルト殿に電子マネーをいただくとしよう」


 こうして森精霊、水精霊、風精霊の通貨システムも電子マネー化することになり、ラテス国の通貨システムは一気に進展したのだった。

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