第41話 風精霊が仲間に加わった

 森精霊32名、水精霊8名が住民として仲間に加わり、オレとハク2人だった頃と比べるとだいぶ賑やかになってきた。

 神様だとカミングアウトした当初は委縮してしまった森精霊も、今では以前のように気さくに話してくれるようになった。


 天空の神殿へは、ハクが度々様子を見に行ってくれている。

 使用人たちも仲が良く、管理はしっかりとしつつものんびり暮らしているらしい。


 精霊たちが来てから森も水も輝きが増して、以前よりも力がみなぎっているように感じる。


 ――次は風精霊を呼んでみようか。

 たしか森精霊たちは、水精霊、風精霊と協力し合って暮らしていたと言っていた。


 しかし風精霊か……どこでどんな暮らしをするのか見当もつかないな。

 森や水と違って一定の場所に留まるものじゃないし、そもそも風には実体がない。


「ハクは、風精霊って見たことあるか?」

「風精霊は15㎝ほどの小さな体で、木の上に住んでいることが多いです」

「木の上って、濡れたりしないのか?」

「風精霊は体質的に極薄の風を纏っているので、水を寄せつけないんです」

「それはすごいな。日常生活に支障はないのか?」

「なんかこう、うまくどうにかなってるようですよ。一応、家は建てますしね」


 なるほど。木の上の家って憧れるな。

 まあ小さいから、完成してもオレは入れなさそうだけど。

 でも木ならいくらでもあるし、住処に困ることはなさそうだ。


 オレはフィーネにもらった【救済措置候補者カタログ】の中から、風精霊を探すことにした。

 風精霊だけでも多くの候補が掲載されていて、どの風精霊にするかとても悩む。


 うーん……

 まだ管理に慣れてないし、多すぎず少なすぎない数がいいな。

 あと争いごとはオレも嫌いだし、できるだけ穏やかな性格がいい。


 ●風精霊 20名

 3567星に住む、風を操る精霊。

 星を管理していた神が星を放棄したため、機能が停止し力を得られなくなった。

 数もどんどん減っているため、早めの救済が必要。

 友好的で人懐っこい性格の者が多い。

 15000G


 ――お。これなんかいいんじゃないか?

 というか星を放棄って。

 住民がいるのによくそんなことできるな……。


「……よし。やるぞ。スキル【召喚】!」


 風精霊のページに手をかざしてそう口にすると、森の方でガサガサと音がした。

 そしてそれと同時に、「わー!」やら「なになに!?」やら慌てている様子の声も聞こえてきた。


「よし、ハク、声がする方に行こう」

「はいっ」


 オレはハクに乗り、声がする方へと向かった。

 召喚した風精霊たちは、ラテス村を背に真っ直ぐ森を進み、グノー村よりやや手前で左に逸れたあたりの木の上にいた。


「あっ、そこの人! すみませーんっ!」

「あ、はい」


 風精霊の1人が、こちらに気づいて声をかけてきた。


「えっと……ここがどこか分かりますかー?」

「あーっと、今からその話をしますので、降りてきていただけますか?」


 オレがそう呼びかけると、風精霊たちがわらわらと集まってきた。

 皆、背中に薄く虹色に輝く透明の羽があり、オレと目線を合わせるためか宙に浮いている。


「おっきい人間だ!」

「ひさびさに見たよねーっ」

「精霊を見ても驚かないんだっ」


 風精霊たちはオレやハクを見て、珍しそうに囁き合っている。

 というか絶滅寸前だったはずなのに元気だな!?


「ええと、初めまして。オレは神乃悠斗。ここの管理をしている者です」

「神のハルト? 神様? じゃあもしかして、助けてくれたの?」


 この名前、人間だった頃は厨二病って散々からかわれて嫌だったけど。

 この世界では説明がラクで助かるな。


「あはは、話が早くて助かるな。今、この星――ラテスでは住民を集めてるところで、よければここに住んでくれないかなと思ってる」

「ええー! 住みたい住みたい! 私たちの星、神様がいなくなっちゃって、もうだめみたいなんだよね」

「ねー。もうこのまま消える運命なのかなって思ってたところ!」


 とてもそう思ってたとは思えないな! 明るい!!


「ええと、じゃあ住んでくれるってことでいいのかな?」

「はーいっ!」

「……このラテスの森には今、森精霊が暮らすグノー村と、水精霊が暮らすディーネ湖がある。それ以外はまだ誰も住んでないから、空いてる場所なら好きに使っていいよ」

「やたー! 神様大好きっ!」


 こうして、風精霊が仲間に加わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る