第40話 水精霊の住処「ディーネ湖」

「ハク、川に沿って少し進んでみたい。悪いけど乗せてってくれるか?」

「はいっ! もちろんですっ」


 いいか悪いか分からないが、最近はハクに乗っての移動にも慣れてきた。

 自分で飛行することもできるけど、そうするとハクが寂しそうな顔をするので乗せてもらうことの方が多い。


 ハクに乗って川沿いを進んでいくと――なんと理想的な湖を発見した。

 これなら水精霊たちも居心地よく住めるんじゃなかろうか。


「ハク、曲がって湖の近くに下ろしてくれ」

「はい」


 湖水は美しく透き通っていて、時折吹く風がキラキラ輝く微小な波を作り出す。

 周囲は豊かな自然に囲まれており、いかにも水精霊が住んでいそうな場所だ。


 ――左奥に見えるのはグノー村か。近いな。

 これなら場所的にもちょうどいい。

 まあ、仲良くやってくれるなら、だけど。


 とりあえず、まずはこのままグノー村に行ってみよう。


 オレは再びハクに乗り、湖の脇を通ってグノー村へと向かう。

 すると何やら騒がしく、森精霊が集まっているのが見えた。


 ――なんだ?


「こんにちは。度々すみません。皆さん集まっていったいどうし――あ」

「あら、神様じゃないですか」

「川から村が見えたので、お散歩がてら遊びにきましたの」


 そこには既に、水精霊たちの姿があった。

 森精霊たちも和やかな様子で、和気あいあいと水精霊と談笑を交わしている。

 長老と水精霊の代表と思われる女性も、早速意気投合している。


「ハルト殿、さっそく水精霊を呼び込んだのですな。みんないい子たちばかりで、これから一緒に暮らせることを思うと楽しみじゃ」

「それはよかったです。ここから少し進んだところに綺麗な湖を見つけまして。水精霊さんたちの住処にどうかなと思ってたところなんですよ」

「まあ! ぜひとも案内していただきたいわ」

「ではこれからご案内します。近いので歩いて行きましょう」


 こうしてオレは、水精霊8名を湖まで案内した。

 湖に着くと、水精霊たちは皆とても気に入ったようで、感動した様子で抱き合って喜んでくれた。


「こんなに美しい湖、本当にわたしたちが使ってもよろしいのですか?」

「もちろんです。実は水精霊の生活スタイルがあまりよく分かってないんですが、住めそうですか?」

「ええ、もちろん! こんな完璧な湖、そうそう出会えるものじゃありませんわ」

「わたしたちは水底に特殊空間を作って暮らす種族です。でも海や川は流れがありますし、ちょっぴり大変なのです」


 水底の特殊空間って、いったいどんな場所なんだろう?

 住処が完成したら、ぜひとも遊びに行ってみたい。

 ……息ができればの話だけど。


「この湖は今発見したばかりでまだ名前がないので、よろしければお好きな名前にしちゃってください」

「わあ! 何にしましょう!?」

「やっぱり、わたしたちらしい名前がいいわよね」


 水精霊たちはしばらく話し合いを繰り広げ、そして――


「では、ディーネ湖と名づけます! いかがですか?」

「いいですね。では、ディーネ湖として登録しておきます」

「何から何まで、本当にありがとうございます」


 こうして新たに発見された湖は、水精霊たちの住処となり「ディーネ湖」と命名されたのだった。

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