第32話 バターチキンカレーをみんなで
オレとハクも必要があれば手伝うつもりでいたが、テキパキと無駄のない動きで村を作り上げていく森精霊たちを見ていて悟った。
ここにオレらが加わっても、足手まといにしかならない。
「ハク、みんなの昼飯でも作ろうか」
「はいっ!」
先日の食堂での料理を見た限り、オレらと森精霊の食習慣にそこまでの差はなさそうだ。
それなら、きっとオレが作る料理でも食べられるだろう。
まあ、あそこまでおいしい料理を作れる自信ないけど。
「何を作りますか?」
「うーん、そうだな……大勢の分がまとめて作れて満足感があってオレでも作れるものといったら――」
よし、決めた。
「カレーにしよう!」
「おおー! カレー!!」
カレーが何度か作っているが、ハクも気に入ってくれている。
「まずはあれだな、ハク、炊飯器と鍋を増やしてきてくれるか?」
「分かりました」
ハクは炊飯器と鍋を【神様の土】で作った畑の方へと持って行った。
オレはその間に野菜や肉を収穫し、下準備に入ることにした。
ちなみにオレの料理スキルはカレーをスパイスから作れるほど高くないので、カレーのルーは買い置きしてある。
――こういうのも、こっちの世界の食材で再現したいよな。
にんじん、玉ねぎ、じゃがいもは、形が少し違うが味はだいたい同じものをこっちでも発見した。
野菜と鶏肉の実をカットし、冷蔵庫からバターとにんにくを取り出しておく。
今日はバターチキンカレーにしよう。
そこに、炊飯器と鍋を収穫したハクが戻ってきた。
「サンキュ。ハク、次はご飯を頼む」
「はいっ」
ハクは貯蔵してある米の袋を引っ張り出し、炊飯器に入れて研いでいく。
オレとハク合わせて7人分ということで、一応8合炊くことになった。
余った分は晩飯にまわそう。
オレは2つの鍋にバターとにんにくを入れ、切った野菜と肉を適当に2つの鍋に分けて炒めていく。
鍋2つ分のカレーを作るなんて初めてだ。
肉と野菜に油が回って少し焼き色がついたら、水を入れて沸騰させ、弱火で煮込んでいく。
オレはこの時にコンソメを少し足すのが好きだ。
野菜が柔らかくなったら、いったん火を止めてカレーのルーを割り入れ、溶かしてから再度火をつけて数分煮込めば完成だ。
室内にカレーのいい匂いが充満し、食欲が刺激される。
ちょうどご飯も炊きあがったようで、炊き立てのご飯のいい香りも漂ってきた。
――食器は7人分くらいなら木皿とカップがあったな。
「ハク、みんなを呼んできてくれ。昼飯にしよう」
「はいっ!」
ハクもおなかが空いてきたのか、狼姿になって全速力で飛び出していく。
そしてあっという間に5人を回収して戻ってきた。
「! こ、これはいったい?」
「うわー! うまそうっ!」
「この白いつぶつぶは何ですか?」
「すっごくいい匂いがする!」
「これは精がつきそうだ」
どうやらみんなカレーライスを見るのは初めてだったようで、テーブルに並べた皿を興味深く眺めている。
「お好きな席にどうぞ。冷めないうちに召しあがってください。ハク、オレたちも食おうぜ」
「はいっ! いただきますっ」
森精霊たちは席につくと、手を合わせて目を閉じ、何やら祈りの言葉らしきものを言い始めた。
――こういうの、どこの世界でもあるんだな。
オレとハクは、何となく森精霊たちに合わせて目を閉じ、手を合わせることにした。
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