第29話 【森精霊のリング】を手に入れた
アスタと呼ばれた青年は、宝石箱のような小さな小箱を持ってきた。
「これは……?」
「森精霊の力を使うことができるようになる【森精霊のリング】じゃ。これがあれば、ハルト殿もこの森の力を借りることができるようになりますぞ」
す、すげえ……。
というかこんなすごいもの貰っていいのか!?
「私たち森精霊が宿ることで、森も一層力を増しましょう。私たちの存在が少しでもお役に立てると嬉しいです」
「こんな貴重なものを譲っていただき、ありがとうございます」
「いやいや。私たちもこの国の発展にぜひとも貢献したいのじゃ」
長老フォーレもアスタも、そして周囲にいた森精霊たちも、皆うんうんと頷いている。
「必ず、この地を素敵なものにして見せます」
◆ ◆ ◆
ログハウスに帰ってきたオレは、早速できることからやっていくことにした。
「まずはこのログハウスをグレードアップしてみようか」
「おおーっ!」
ハクはパチパチと拍手をし、期待の眼差しでこちらを見ている。
この【森精霊のリング】は、まず指にはめ、大地からリングに力を送るイメージをし、それから実行したい内容を思い描くことで発動するらしい。
力を集中させる感覚は、ここに来てからの神様活動でだいぶ身についている。
オレはログハウスに手をかざし、理想のログハウスを思い描いた。
――うん。理想のログハウス。
思い描いたのが豪華な家でも大きなお屋敷でもないのは、ログハウスこそオレが長年憧れていた家の形だからだ。
豪華な家は天空にあるしな。
東京のコンクリートジャングルで毎日ひたすらパソコンを睨みつけていたオレは、ここに来てから自然の有難みをひしひしと感じていた。
自然は、ログハウスの温もりは、ただその中でぼーっとしているだけで心を浄化してくれる不思議な力を持っている。
リングに力を込めると、ログハウスは強い光に包まれ、次第に形を変えていく。
木だけだった本体にレンガがプラスされ、1階建てが2階建てになり、ドアが改修され、窓も木でできた簡易なものからガラス窓へと変えていく。
そして室内で気兼ねなく料理ができるよう、煙突もつけることにした。
「よし、こんなもんか!」
「す、すごいです! 大きい……!」
部屋の数も広さも一気に増し、オレとハクはそれぞれ自分の部屋を持てるようになった。
これなら、この土地を管理する者としてまあまあ恥ずかしくない仕上がりだろう。
ついでにベッドやテーブル、椅子なども新たに作り直し、キッチンも大理石と木を組み合わせた豪華な仕様にした。
ハクも料理に興味を持っているし、2人で料理ができるサイズのキッチンがほしかったのだ。
「これなら、森精霊たちが来たときこっちもおもてなしできるな」
「はいっ」
いよいよ本格的に始まった世界構築に、オレの心も少しずつ変化していった。
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