第28話 【回復鉱石】を設置してみた

 おいしい料理をおなか一杯食べ、ひと段落して、オレたちは散策を再開した。

 村のあちこちに様々な店があり、見たことのないアイテムがたくさん売られている。

 食材や食器、日用品、雑貨、衣料品、それから何やら不思議なアイテムの並ぶ店……。

 どの店の商品も1つ1つ丁寧に作られていて、これらを見ているだけで森精霊たちの人柄が伝わってくる。


 ――オシャレな店が多くて、村全体がテーマパークみたいだな。

 ハクも興味津々だし、やっぱり女の子はこういう場所が好きなんだろうか?


「私たち森精霊が作るアイテムには、私たちならではの力が宿るんです。ですので、きっと何かお役に立てると思いますよ」

「お互い、情報交換をしながら暮らしやすい世界を作っていきましょう」


 ――そうだ。


「そういえば、村完成のお祝いがまだでしたよね。森精霊さんたちに役立つかは分かりませんが、よろしければこの【回復鉱石】を村に設置してはどうでしょう?」


 オレは【アイテムボックス】からフィーネにもらった神様アイテム【回復鉱石】を取り出し、村の中心あたりに設置した。

【回復鉱石】は、オレの身長くらいのサイズ感で、大きな水晶のような見た目をしている。

 透き通った鉱石は美しい緑色の光を放っており、圧倒的な存在感を持ちながらグノー村の景観を損なうことなく、より魅力的なものにしてくれた。


「!? こ、これはいったい?」

「ええと……回復スポットの一種です。鉱石力を溜め込む特別な鉱石らしく、近くにいるだけで癒し効果が得られますよ」


「とても純度の高い、強い力を感じます。ハルト様、あなたはいったい何者なんですか? 長老から、この辺りを管理している領主様だと聞いていたのですが」

「あー、まあ、だいたいそんな感じです。すみません、詳しいことは」


 実はこの世界の神様です、なんて言ったら、怖がられてしまうかもしれない。

 せっかく良好な関係性を築けそうな今、それを壊してしまいそうな情報は伏せておきたかった。


「そ、そうですよね。勝手に踏み込もうとしてごめんなさい」

「いえ。あ、邪魔になりそうなら場所も移動できるので、遠慮なく言ってください」

「中心にあった方が平等に恩恵を受けられそうですし、ここがいいと思います」

「それならよかった」


「私たちからも、ささやかではありますがお礼の品をお渡しさせてください。長老の家にご案内します」

「ありがとうございます」


 長老の家は、村の奥の方にあった。


「おお、ハルト殿。村はいかがでしたかな?」

「素晴らしい村で感動しました。料理もとてもおいしかったです」

「楽しんでいただけたようで何よりじゃ」

「実は、村づくりの手伝いをしていただく約束までしてしまいました」

「それはそれは。ハルト殿の村づくりに携われるというのは、こちらにとっても名誉なことです」


 なんだろう。オレの扱いが勝手に神格化されてる気がする。

 たまたま手違いで死んで力をもらっただけの元サラリーマンですみません……。


「さて、村の案内も終わったところで、ぜひともお礼をさせてくだされ。アスタ、例の品を」

「はい、長老」


 アスタと呼ばれた青年は、宝石箱のような小さな小箱を持ってきた。

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