第21話 空に浮かぶ神殿をもらった
「おはようございます」
「おお、おはよう」
「はっ――! ご主人様、ついに正式に神族として認められたんですね!」
「分かるのか」
「こんなに早く認められるなんてすごいです! おめでとうございますっ」
ハクに真っ直ぐな目で祝福され、何となく照れくさい気持ちになる。
神族と言われても正直ピンとこないが、それでも少しは神としてきちんと役割を果たそうなんて考えてしまう。
「これから改めてよろしくな、ハク」
「はいっ! こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
こうしてオレとハクは、気持ちを新たに神様活動を――
と思っていたが。
「ああっ! 待って待って! 君に神殿あげるの忘れてた!」
「――え?」
突然フィーネが現れた。
ステータス画面からの会話でも夢でもなくこの世界に現れるのは、最初に会ったあの時以来だ。
ハクは驚きのあまり、ただただポカンとしている。
「神族になったんだもの。神殿くらいないと格好つかないでしょ? ほいっ!」
フィーネが空に向けて手をかざすと、そこに立派な神殿が現れた。
天空に浮かぶ小さな島の上に建てられたそれは、今まで住んでいたログハウスとは比べ物にならないほど巨大で豪華だ。
「今日から君はあそこに住むの。分かった?」
「え? は?」
「だから、あそこが君のおうち!」
「はああああああああああああああああ!?」
上空にそびえる神殿を前に、俺は言葉が出ず呆然としてしまった。
「村を創るんでしょ? 村人と一緒に暮らす神様がどこにいるのよ」
「いやでも、あんなとこにどうやって……」
オレが当然の疑問を呈すると、フィーネは「こいつ何言ってんだ」みたいな顔でこちらを見て、それから大きなため息をついた。
「まったくこれだから元人間は。君はこの世界の神様なのよ? 飛ぼうと思えばすぐ飛べるわよ。ほら、試しにやってみなさいっ」
「ええ……」
説明が雑すぎて全然納得できないが、オレは前世で見たアニメやマンガの記憶を頼りに空を飛ぶ姿をイメージしてみた。
すると。
まるで飛べるのが当たり前であるかのように、体がふわっと宙に浮かぶ。
「で、できた……」
「わー! すごいすごーい! 上手に飛べまちたねーっ! ハルトくんは優秀でちゅねーっ」
フィーネは完全に馬鹿にしきったような笑みを浮かべながら、赤ちゃん言葉を交えて大げさに拍手をする。
「うぜえ。おまえ絶対友達いないタイプだろ」
「なっ――そ、そんなことっ」
どうやら図星だったらしい。
真っ赤になって悔しそうに口を膨らませるフィーネを見て、この女神は性悪というより残念なのだと理解した。
でもまあ、この感じならあの神殿まで行くのも容易いだろう。
「せっかくだし、神殿に行ってみるか。ハクは空は――」
「飛べます」
ハクは狼姿に戻り、大きな翼を広げて見せた。
飛べるのかよ! というか翼すごいな!!
「【何でもしてくれるモフモフ】は、アイテムだけど神獣なのよ? 空くらい飛べるに決まってるじゃない」
「あーはいはい。無知で悪かったな」
「そうすぐに拗ねないの! そのうち分かってくるから大丈夫よ」
なぜか慰められてしまった。
「私が一緒に行って、いろいろ案内と説明をするわ。ついてきなさい」
こうしてオレとハク、そしてフィーネは、天空の神殿へと向かったのだった。
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