第13話 【神様の土】を使ってみた
果物と焼肉で腹いっぱいになったオレたちは、午後の作業に取り掛かることにした。
「午後は何をしますか?」
「とりあえず、【神様の土】を使って今あるものを増やしてみよう」
どんなことが起こるのか、どうやって複製されるのか、詳細が知りたかった。
オレは【神様のロープ】で囲った敷地内の一角に【神様の土】をで小さな畑のようなものを作り、そこにタオルを1枚埋めてみた。
「これ、土だらけになるけど大丈夫か……? 布ものはまずかったかな」
そう思ったが。
しかし次の瞬間、そんな不安は軽く消え去った。
布を埋めた場所からなぜか芽が出てきたのだ。
えええええ。
いや、まさかな。でもこれは――
タオルの芽(?)はどんどん成長し、あっという間にオレの背丈を追い抜いて立派な木になった。
そして――大きい胡桃のような形状の実があちこちにでき始めた。
…………。
オレは困惑しつつもその実を1つ取り、先ほど購入した包丁を使って殻を真っ二つに割ってみた。
殻は固い割に案外あっさりと割れ、中から埋めたタオルと同じものが出てきた。
「す、すげえええええええええ!!!」
「たまに突然変異で色違いが現れることもありますよ」
「埋めたタオルはどうなったんだろ」
「埋めたタオルは種や養分の代わりなので、もうありません」
埋めたタオルは種や養分の代わり。
あまりに人知を超えた、というかもはや魔法か手品としか思えない現象に頭が追い付かないが、これはすごい。
「よし、次は――そうだ!」
オレは初日に注文したステーキが乗っていた鉄板のことを思い出し、それを持ってきてタオルの木の横に埋めてみた。
すると――先ほどと同じようにたちまち成長し、今度は鉄板が実った。
大きな木に多数の鉄板がぶら下がっているというシュールな光景は、もはや悪ふざけとしか思えない。
しかし1つもいで確認してみると、間違いなく鉄板だった。
「ハク、鉄板をもいでくれないかな」
「かしこまりました」
ハクは狼姿に戻ると軽々と木に登り、次々と鉄板をもいで集めてきてくれた。
「こんなにたくさんの鉄板、どうするんですか?」
「ふっふっふ。見てろよー。スキル【神様】!」
集められた鉄板に向けてスキルを発動すると――立派な鉄鍋と鉄のフライパンが創造された。
「鍋とフライパンですか! なるほどこれはいいですね」
「せっかくブラック企業のデスマから解放されてこんな世界に来たんだ。人間らしい生活がしたいし、おまえと一緒にうまいものが食いたい」
「ぼ、僕とですか!? そんな、僕アイテムなのにいいんでしょうか……」
「オレがそうしたいんだからいいんだよ。1人で食うよりおまえがいた方が何倍もうまいし楽しいしな」
「そ、そうですか……」
ハクは照れた様子でもじもじしているが、それがまた可愛い。
「残りのタオルと鉄板も一応回収してしまおう」
「はいっ! お手伝いしますっ」
なっているタオルの実と鉄板をすべてもぎ終わると、木はキラキラ輝く粒に変わってサラサラと消えてしまった。
地面には、何事もなかったかのように【神様の土】だけが残っている。
――なるほど。
一度収穫し終えると勝手に消えるのか。便利だな。
「あと問題は、風呂やトイレ用のドアと、湿気がこもらないように窓を作ろう。布団ももう1組いるよな」
布団を埋めたいが、今ある【神様の土】では足りそうにない。
もう少し買い足して畑を広げないとな。
――と、そこで。
『レベルが10になりました』
「え、なんだ?」
突然頭に声が響き、自動でステータス画面が開かれた。
名前:カミノ ハルト
職業:神様 Lv.10
スキル:【神様】【理の改変】【建築】
所有アイテム:【完全未開拓惑星】【何でもしてくれるモフモフ】【神様用の飴】【世界地図】【神様の土】
所有ポイント:12750pt
所持金:7200G
『おめでとう。ここまでよく頑張りましたね』
声の主は例の――あの駄女神フィーネだった。
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