第9話 1日の終わりと駄女神との再会

「ハク、布団はおまえが使っていいぞ。あとこれ、タオルと菓子パン。夕飯がこんなものしか出せなくて悪いな」

「!? そんな、お布団はご主人様が使ってください! それに僕は食事を必要としませんので菓子パンも不要です。タオルだけで十分ですっ」


「そうなのか。食事が不要なら、おまえはどうやってエネルギーを補給するんだ?」

「この惑星に充満してる鉱石力が原動力になってるんです。味覚はあるのでご飯もあれば食べますが、余裕がない今僕が食べるのは――」

「そ、そうか。まあ食事が不要だってんなら、今回はありがたくちょうだいするよ。正直、菓子パン1つじゃ食べた気しないからな。でも布団はダメだ。おまえが使え」

「そんな。では一緒に寝ましょう。くっついて眠ればきっとあったかいです。そうじゃなければ絶対に使いませんっ」


 ハクはぷいっとそっぽを向く。


 こいつ案外頑固だな!?

 というか一緒にって……


「あのなあ。おまえにオレがどう見えてるのか知らないけど、オレだって一応男だし、見た目は若いが中身はおっさんなんだぞ? おまえ嫌じゃないのか?」

「? なぜですか?」

「いや、なぜって……それは、だな……」


 オレがしどろもどろになっていると、ハクは心なしか冷ややかな目を向けて言った。


「ご主人様は、アイテムに欲情する変態さんということですか? それに初めてお会いした日、一緒に寝たじゃないですか」

「いや、あれはおまえが狼の姿だったし、そもそも寝てる間のことでいつの間にああなったのか……」

「なるほど。狼の姿ならいいんですね。では――」


 ハクは狼の姿に戻り、床に寝そべった。

 狼姿のハクはとても大きく、余裕があったはずのログハウスが一気に狭くなる。


「これならどうです? モフモフであったかいですよ」

「……まあさっきよりはマシだが、でもうーん」


 どうしても人型の愛らしい姿が頭に浮かんでしまう。

 いや、狼の姿もこれはこれで愛らしいんだが。


「僕はアイテムなので、ご主人様のお役に立てないのは悲しいです……」

「ぐ……。分かったよ。じゃあ今日は一緒に寝よう」

「はいっ」


 食事を済ませ、それぞれ川で体を洗い、寝る準備をして共に眠りについた――。


 ◆ ◆ ◆


「神様活動初日、お疲れ様です」

「あっ、おまっ――あの時の駄女神!」

「ちょっと誰が駄女神よっ! 初日からステーキなんて食べる愚か者に言われたくないわよ!」

「あれはおまえがちゃんと説明してなかったからだろっ」

「だって聞かれなかったしー」


 こいつ殴りてえ!


「そんなことより調子はどう? 【何でもしてくれるモフモフ】はうまく活用できてるかしら」

「ああ、まあな。しっかりしてるし、一瞬で木を切り倒すし、力もあるし、大活躍してるよ」

「それに超絶美少女ちゃんだしねーっ! ハクちゃん、だっけ?」


 女神はにやにやしながらクスっと笑い、意味ありげな顔でこっちを見る。


「なんだよ文句あるのか?」

「ないわよ。ないけど、でもアイテムにそんな可愛い名前つけるなんて思いもしなかったわ。ウケるんですけど!」

「やかましいわっ! だいたいアイテム名長すぎなんだよ! 呼びづらいだろっ」


 この性悪駄女神め。いつかぎゃふんと言わせてやる!


「分かりやすくていいじゃない! まあでも、楽しくやってるならよかったわ。明日からも頑張って神様活動に勤しんでねっ」

「――ったくいい気なもんだな」

「そんな拗ねないの! 頑張ったご褒美にちょっとしたアイテムをプレゼントしとくから。明日起きたら確認しなさい」

「はいはいそりゃどーも」


 こうして1日を終え、駄女神との会話も終えて、オレは深い眠りに落ちたのだった。

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