第8話 神様なのに金がない……だと……
その後もハクは、まるで発泡スチロールでできているかのごとく軽々と大木を持ち上げ、1人でせっせと積み上げていく。
この細い腕のどこにそんな力があるんだろう?
森の一角だったはずの場所は、あっという間に開けた空間と積み上げられた木材に様変わりした。
「ふう。これくらいでいいでしょう。ここからはご主人様の出番です。スキル【神様】で、この木材を家にしてください。今のところ木しかないので簡素なものにはなりますが、とりあえずの拠点としては十分かと」
「分かった。スキル【神様】!」
ログハウスをイメージしながら唱えると、積み上げられた木が強い光に包まれる。
そして光が消え去った場所には――立派なログハウスが建っていた。
豪邸とはいかないが、ハクと2人で暮らすにはまったく問題ない広さだ。
「すげえ! ログハウスって憧れてたんだよ! ……というか、こんなことができるなら切り倒さなくてもよかったんじゃないか?」
「いえ、この惑星のコアと繋がっているものは、一度コアから切り離さないとアイテムとして認識されないんです」
コアというのは、この惑星の動力源となっている鉱石層のことらしい。
「なるほどな。あとは寝る場所とトイレと風呂が必要だよな」
「では、追加で木を持ってきますね」
「ん、頼むよ」
こうしてオレは、ハクが木材を取りに行っている間にそこらへんに落ちていた大きめの石で穴を掘ることにした。
簡易トイレにするためだ。
――トイレはこれでどうにかなるとして、問題は風呂だな。
木を組み立てただけじゃ水が漏れるだろうし……。
いや、ものすごい太い木の中身をくりぬけばいいのか?
でもそんな都合のいい木、あるかな。
にしても、石で掘るというのは思った以上に難しい。
なんかこう、せめてもうちょっと尖ってれば――あ。
「スキル【神様】!」
オレは旧石器時代~弥生時代あたりで使われていた石器をイメージした。
生前、学生時代に歴史の資料集で見たやつだ。
石は見事に削られ、鋭利な刃物のような形になった。
よっしこれでいける!
人間も、こうして工夫を重ねて進化していったんだな。
「ご主人様、木を持ってきました。これくらいでいかがでしょう?」
「おお、ありがとな。……お、これいいな! この太いのを風呂にしよう」
こうして風呂、簡易トイレ、ベッドの枠、テーブルと椅子を作り上げたところで、限界に達したのかスキルが発動しなくなった。
「続きはまた明日だな。本当はあったかい風呂に入りたかったけど、今日は川の水で体を洗うので我慢しよう。ハク、悪いけどそれでいいか?」
「もちろんです。僕はアイテムですので、僕のことはお気になさらずです。神様活動、お疲れ様でした。だいぶ家らしくなってきましたね。ステータスも少しは変化したんじゃないでしょうか?」
「あ、そうか。【ステータス】!」
名前:カミノ ハルト
職業:神様 Lv.3
スキル:【神様】【理の改変】【建築】
所有アイテム:【完全未開拓惑星】【何でもしてくれるモフモフ】【神様用の飴】
所有ポイント:5500pt
所持金:3000G
「よし、レベルも上がってるし、ポイントと所持金も増えてる。スキルってあの飴以外でも増えるんだな。とりあえず、ポイントで布団2組とタオルを数枚購入しよう」
【SHOP】へ画面を切り替えると、購入できるアイテムが並んでいた。が。
掛け布団:3000pt
敷布団:3500pt
枕:900pt
枕カバー:300pt
簡易布団セット(敷布団、シーツ、掛け布団、枕、枕カバー):5000pt
:
:
タオル:130pt
タオル5枚セット:500pt
足りない……だと!?
布団セットとタオル5枚セットを購入したらポイントがゼロになってしまう。
食べる物もないし、全部つぎ込むわけにはいかない。
というか、この必要なポイント数って日本での価格とだいたい一致してるよな。
ということは昨日のステーキって……
オレは恐る恐る購入履歴を確認する。
ステーキセット(お皿、ナイフ、フォーク付き):6500pt
あああああああああああ!
しまったやっぱりかああああああ!!!
くそっ……知ってればステーキなんか食べなかったのに。
こんな初歩的なことくらい教えていけよ駄女神めっ!
オレは仕方なく簡易布団セット1組とタオル2枚、菓子パン2つ(1つ120pt)を購入した。
ポイント残高は見事にゼロとなった。
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