第3話 ちょっと何言ってるか分からない
「いやいやいやいや。ちょっと待て。オレはただのサラリーマンだぞ。そんな突然神様とか言われても困るんだが」
「うんうん、ですよねですよね。そんなあなたに! さらなる特典として【何でもしてくれるモフモフ】を授けましょう!」
いやそんな深夜の通販番組みたいなテンションで言われても。
というか【何でもしてくれるモフモフ】ってなんだよ……。
「大丈夫! スキル【神様】と【何でもしてくれるモフモフ】があれば、星の1つや2つ創るなんて楽勝よ! この何にもない世界を自分好みの色に染められるって、ワクワクしない? するでしょ!?」
「……え? 何にもない世界?」
ここに来てから、目にしたのは広大な森とこの川(とこの怪しい女神)だけ。
未だ動物や虫の鳴き声1つ聞こえない。
こ、これって――
「まあ【完全未開拓惑星】だからね。人はもちろん、動物も虫もいません。あ、でも安心して! この惑星の地下深くには不思議な力を放つ鉱石の層があって、その力【鉱石力】のおかげで、地球みたいな食物連鎖がなくてもちゃんと機能してくれるらしいの。なんて便利な世界!」
女神は両手を胸のあたりで組み、恍惚とした表情を浮かべている。
が、それはつまり――
「じ、じゃあまさか、こんなとこでおまえと2人で暮らせと?」
「いやいや、私は神界に帰るわよ。だって女神だから。君は【何でもしてくれるモフモフ】とともに生きていくの。はいっ、これがその卵ね」
「重っ!?」
オレは女神からダチョウの卵サイズの卵を渡された。
「明日には孵るはずだから。大切にしてね。ほかに何か質問ある?」
「いや、むしろ質問しかないんだが。いったいオレは、これからここでどうすればいいんだ?」
「君には使命なんてないから、好きにしていいわよ。この惑星もセール品で……まあこれはいっか。とにかく、自然を満喫しながらのんびり暮らすもよし、美少女ばかりのハーレムを作るもよし、趣味の世界に走るもよし、自由よ自由!」
「はあ……」
「じゃあ、そういうわけだから。あとは任せます! たまに様子を見に来てあげるから安心して励みなさい!」
女神――フィーネは、それだけ言うとその場から消えた。
その場は再び静寂に包まれ、ただ小川のせせらぎだけが変わらない音を立てている。
これが夢でないとすれば。
どうやらオレは、今日からここで暮らしていかなければならないらしい。
しかも神として。たった1人(とモフモフ)で。
この【何でもしてくれるモフモフ】とやらはちゃんと喋れるんだろうな!?
突然襲ってきたりしないよな……?
せめてその辺のことを聞いておくんだった。
と、ここで。
オレは重大なことに気づいてしまった。
――待て。食料は!?
動物がいないということは、食べるのは何らかの植物ということになるはずだ。
しかし森の中でも、果実のようなものを見た記憶がない。
え? まずくないかこれ。
というか普通に腹減ってきたんだが……。
この卵を食べ――るのはまずい、よな?
オレは巨大卵を抱えたまま、しばらく1人立ち尽くした。
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