第2話 こっちで楽しく生きてね☆←え?
しばらく歩くと、川が見えてきた。
川は美しく透き通っていて、点在する岩場に水が当たり、あちこちで小さな水しぶきを上げている。
――す、すげえ。
心地よい風と優しく流れるせせらぎの音、自然の美しい風景とここ数年無縁だった景色を目の当たりにし、心が洗われていくのを感じる。
こういうの、久しぶりだな……。
オレは川の周囲を見渡し、どこか流れがせき止められている一角を探した。
そしてそこに自分の顔を映す。
――オレではある。けど、若いな!?
恐らくだが、20代前半くらいの容姿に戻っている。
こ、これはもしかして、最近流行りの、というよりもはや増えすぎて「またかよ」と呆れ飽きられている、異世界転生というやつか!?
いやでもまさか、現実でそんなこと起こるわけが――
ざわざわと焦りを訴えてくる心をどうにか落ち着かせようとしていたその時。
目の前に強い光が現れ、そこに1人の女性が現れた。
「初めまして。神乃悠斗(かみの はると)さんですね? 私は生と死を司る神、フィーネです」
「あ、初めまして――え?」
今、神とか言ったかこの女。
長い金髪を風になびかせる彼女は絶世の美女で、綺麗な緑色の瞳をしている。
そして白いワンピースを身に纏い、半分透けた羽衣のようなものを纏って宙に浮いていた。
浮いていた!?
「ゆ、ゆゆゆゆゆゆ幽霊っ!?」
「ちがーうっ! たった今神って名乗ったでしょっ! 失礼な子ねっ!」
この神と名乗る女は、手を腰に当ててぷくっと口を膨らませる。
10代後半程度に見える容姿はとても愛らしく、ここが元いた世界でこいつがただの人間ならば一目惚れしていたかもしれない。
が、正直今はそれどころじゃない。
「すみません、今ちょっと。またにしていただけますか」
オレは自称神に背を向け、逃げるようにその場を去ろうとした。
しかし。
「待って待って待って! こんな森の中にこんな美しい女神様が登場したんだから、次の流れも分かるでしょ!? 君は死んで、ここに転生したの! 私の力を借りなくていいの!?」
「……ええと。神様、なんでしたっけ? なら、この状況どうにかしてください」
「そうでしょそうでしょ。うんうん。任せなさいっ☆」
……神様ってもっとこう、物静かでおしとやかなイメージだったんだが。
こいつ本当に神なのか?
威厳の欠片もねえな。
「まず、状況を説明します。あなたはちょっと――手違いで死んでしまって、さらにちょっと間違って、ここ【完全未開拓惑星】に転生しちゃったのです」
「おい待て。なんか聞き捨てならない単語が3回も聞こえたんだが?」
手違い? 間違って? 完全未開拓?
「簡単に言うと、ちょっとした手違いで未開拓な惑星に魂を飛ばしちゃったってことかなっ☆」
「はああああああ!? おま、ふざけんなよ! そっちのミスだろ責任取れよ!」
「もうっ! 話を遮らないでよ調子狂うなあっ! ――ええと、だからあなたには、とっても楽しいボーナススキルを与えます。その名も【神様】! どう?」
いや、どうって聞かれても。
というか【神様】ってどんなスキルなんだ?
嫌な予感しかしない……
「えっとね、つまり、あなたにはこの【完全未開拓惑星】の神になってもらいます! 人間から神様になるなんて大出世よっ! こっちで楽しく生きてね☆」
こっちで楽しく生きてね☆
じゃねえええええええええええええええ!!!
この日、オレの神様生活は強制的にスタートした。
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