第1章 転生して神様に
第1話 オレ、デスマ中だったよな?
カタカタカタカタ……
カタカタカタカタ……
しんと静まり返る部屋に、ひたすらキーボードを叩く音が響いている。
もう何日家に帰ってないだろう?
いい加減、自宅の布団に包まれて安眠したい。
デスク上には山のように積まれた書類とコンビニの袋やゴミ、栄養ドリンクの空きビン空き缶が散乱しているが、今はそれを片付ける気力もなかった。
視界がぼやけ、体力も精神も限界などとうに超えている。
しかし明日の朝がタイムリミットである以上、ここで止まるわけにはいかない。
――オレ、いったい何やってんだろう?
心の中に浮上してくるそんな感情を隅に追いやりながら、椅子に座ったまま背伸びをして、未開封の栄養ドリンクに手を伸ばす――はずだったのだが。
――痛っ……!
背伸びをしたところで突然頭に激痛が走り、視界がじわっと黒く染まって体が言うことを聞かなくなった。
オレは椅子からずり落ちる途中で、抗う術もなく意識を失った――。
◆ ◆ ◆
――んん。
体の下に冷たさを感じ、オレは意識を取り戻した。
倒れた――んだったよな。
その拍子に栄養ドリンクかペットボトルを倒してしまったのだろうか?
着替え、洗濯したやつまだあったっけな……。
それにしても、この床やけにざらざらしてんな。
土だらけじゃないか。
ちゃんと掃除してんのか?
「――って、んんんん!?」
オレは手に感じる床――というより地面の感触に違和感を覚え、目を開く。
すると目の前の高いところには、木が生い茂っていた。
「は!? え!?」
いったいどういうことだ?
ここはどこだ?
オレは慌てて上半身を起こし、周囲を確認する。
倒れる前まであれだけ満身創痍だった体も、まるで疲労というものを忘れてしまったかのように軽い。
夢――か?
いやでも、手に感じた土の感触も、土と接していたせいで少し濡れている背中も、感覚がやけに生々しい。
最近は気絶するかのように眠りについていたため長らく夢を見ていないが、少なくともオレの記憶の範囲では、夢はこんなにリアルじゃない。
となると。
――もしかして、オレ、死んだのか?
そんな不安が頭をよぎる。
自分の体を見ると、心なしか若返っている――ような気がしなくもない。
しかし生まれ変わったにしては歳がおかしい。
転生というのが現実に起こりうるのかは知らないが、少なくとも普通は赤ちゃんに生まれ変わって、ゼロからの再スタートとなるはずだ。
でも自分の顔を確認しようにも辺り一面森で、周囲には木々しか見当たらない。
それに。
人がいないのはもちろん、動物や虫の声も一切しない。
聞こえてくるのは、風によって擦れる木の葉音、そして小川のせせらぎのような水の音だけだ。
――いや待てよ。水の音ってことは、近くに川があるのか?
よし、とりあえずまずは川を目指そう。
というか、喉かわいた……。
オレは立ち上がり、ひとまず川を目指して森の中を歩くことにした。
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