第4話
制服を正し、荷物を置いて、ノックする。
扉を開け待っていたのは、成瀬さんと先生。
成瀬さんは、顔を怪我しており、また、
むっとした顔をして下を向いていた。椅子に 座ると先生が話し始めた。
「成瀬は、昼休み終了前、2年の奴らを
殴ったそうなんだ。そいつらは、
何もしてないのに急に殴られたって
言ってるんだ。成瀬に聞いても、
ずっとこの調子で口を開かない。
そこで、事情聴取をすることになった。」
―頭が追いつかなかった。成瀬さんが、
人を殴った?しかも2年の人たちを?なぜ?
考えてもキリがなかった。とりあえず、
深呼吸をして、冷静になろうとした。そして
昼休みのことを話した。学食で、昼食を食べ
食べ終わったらすぐ学食を出た、と。
そしたら、『君』がこちらを向き笑った。
そして、
「ごめんね、『俺』こんな人間なんだ。」
そう言ってまた、下を向いて黙った。
僕はなんて言ったらいいかわからなかった。
「‥どうして殴ったんだ?」
気がついたら声に出てしまっていた。
しまったと思い何か言おうとしたら、君が
「頭に‥‥きた、から。
平野さんの‥悪口言ってて‥。」
と、喋った。僕はとても驚いた。君が
殴った理由を知り胸が苦しくなった。
僕が‥原因?それで君は怪我したの?
どうしてそこまでしてくれるの?
何もしてないのに?その時、初めて君の
『優しさ』に気がついた。殴ったことは
決していいこととは言えない。しかし、
誰に対しても親身になれる君の行動がすごい と思った。僕はきっと出来ないから‥。
「あー、そういうことか。
2年の奴らも悪かったんだな。下手に
怒鳴って悪かった、成瀬。
校長には俺から言っておく。
長く引き止めて悪かった。気をつけて。」
そして先生は、僕らを玄関まで送ってくれ、
僕は成瀬さんと帰ることになった。正直
気まずかった。でも、その頃にはまた、
いつものように笑ってくれた。駅で
別れようとしたら、もう暗いし送るよ、と
言ってくれた。断ろうと思ったが、今日の事
もあるのでお言葉に甘えさせてもらった。
「平野さん、テストどうだった?」
「今のところ、順調かな。」
「す、すごい‥。尊敬する!」
「ふふっ。ありがとう。」
そんな事を話していると家に着いた。別れの
挨拶をしようとしたら、玄関が開いた。
母さんだった。
「おかえりなさぁい。遅かったわねぇ。
!あら〜、送ってもらったの?」
「ただいま。そうだよ。成瀬さんだよ。
成瀬さん、僕の母だよ。」
「初めまして、平野さんには
いつもお世話になってます。」
「初めまして〜!こちらこそありがとねぇ
お時間あるならお夕飯食べていかない?」
「お気持ちだけ頂いておきます。」
その直後、ぐ〜っと成瀬さんのお腹の音が
鳴った。恥ずかしそうにお腹を押さえる。
「‥やっぱり少し食べてもいいですか?」
「えぇ、もちろん!たくさんどうぞ〜!」
こうして成瀬さんは、家で夕飯を食べる運び となった。明も帰っていたようで、
4人で食べることになった。僕は、父さんが
いなくてよかったなと思った。
成瀬さんは、食べる度とてもニコニコして、
母さんが嬉しいわ!と言っていた。
「ご馳走様でした!美味しかったです!」
「ふふっ、良かったわ。
またいつでもいらっしゃい!」
「ありがとうございます!」
「あら、もうこんな時間。
駅まで送らせてちょうだい!」
「ありがとうございます。
でも、走ればすぐなので大丈夫です。
夕飯ご馳走様でした!お邪魔しました。
平野さん、また明日!」
「あっ、あぁ。また明日。」
そう言って成瀬さんは、帰っていった。
もう遅いし、とっとと風呂に入って寝よう。
風呂に入り、部屋に戻った。横になっている と、父さんが帰ってきた音がした。下で
何か話をしている声がする。まぁいい。
そう思い僕は電気を消し寝ることにした。
―結論から言えば、この日僕は成瀬さんに
送ってもらうべきではなかった。
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