第17話 ドラコニアン
部屋で一人、窓ごしの月を眺めていた。そこにヤモリはいない。最近の非日常のおかげで、大したことでは動じない心を手に入れたようだ。ハタ師から、連絡があって、暫くはなにもないらしい。しかし、一ヶ月後の10月13日にドラコニアン掃討作戦が決行されるとのことで、僕はそれに備えて、瞑想していた。チャクラを練って、増幅させ己の限界を超える。
「さあて、そろそろ学校だ、アレナ、喜ぶだろうな」
もらった遺伝子操作薬をポケットにいれ、僕は母さんに行ってきますといい家を出た。暫くすると梓が話しかけてきた。
「おはよう!」
いつもより元気が良かった。
「おはよう」
そう返すと、梓は潤んだ瞳で言った。
「けんちゃん、危ないことになってない?」
僕は、
「なってるよ」
と開き直ったように言った。梓は、涙を流して懇願するように
「死んじゃやだよ」
と言った。僕は、
「俺がそんなたまかよ、そう簡単にゃ死なねえよ」
と力強く言ってみせた。梓はうんと頷き、校門についた。つくなりアレナが
「グッドモーニング」
と話しかけてきたので、小声で、
「昼休み、屋上へ」
と言った。アレナははっとした表情で、オーケーと返した。そして授業が始まり、そつなくこなして、昼休みがきた。僕は屋上へ向かった。階段を登り、ドアを開けると、そこにアレナが、待ってましたと待ち構えていた。
「アレナ、これ、もとに戻る薬」
といって遺伝子操作薬を手渡すと、アレナは嬉しそうに、
「ソーグレイト」
と言った。早速薬を飲むアレナ。すると、
「熱い!体中が熱いわー」
と悶だした。そして全身が湯気に覆われ、気づくとアレナはバタリと地べたに倒れ込んだ。
「大丈夫か?」
僕が心配して声をかけると、アレナは、
「大丈夫です、少しくらくらするけど」
といい、着ていたジーンズのボタンを外して、パンツの中を確認していた。僕は後ろを向いて見ないようにしていた。
「ワンダフル!」
アレナは、嬉しそうに僕に近寄り、キスしてきた。
「おい、どーなったんだ?」
僕はまんざらでもない様子で、アレナに聞くと、
「全部元通りでーす」
とあっけらかんと答えた。僕は思わず笑った。アレナはありがとうと何度も言い、その場を去っていった。僕は、人ひとりを救えた喜びで溢れていた。それから、午後の授業を終え、僕は、久しぶりに暇になった。
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