第13話 実戦
いつものことなので気をとめないでいたが、きゃあという悲鳴が聞こえたので直行した。その場にはあずさがいた。それと大柄なレプタリアン。僕は、
「おいお前、俺が相手だ」
と言って挑発すると、やつもこちらに注意を払い一触即発のムードになった。
「け、けんちゃん!」
あずさは突然の僕の登場に驚いている。大柄なレプタリアンはいきり立って襲いかかってきた。僕は技を初めて実戦で使ってみることにした。
「合旦斬!」
それはレプタリアンの片腕を斬り落としていた。レプタリアンはもがき苦しんでいる。
「逃げるなら今のうちだぞ」
僕が脅し文句を使うと、そのレプタリアンは慌てて逃げ出していった。
「うえーん、怖かったよう」
子供のように泣きじゃくるあずさに僕は、
「なんでこんな時間に外に出た?」
と聞いた。するとあずさは、
「けんちゃんの帰りを迎えようと思って」
と言った。僕は語気を強めて、
「バカ野郎!危険なのがわからねえのか?」
と言い放った。あずさはしゅんとなって、
「だってだって、最近けんちゃんと帰れなくなっちゃったし、代わりにと思って」
と言った。しゅんとしていたかと思うと水を得た魚のように、
「でもすごいよけんちゃん、レプタリアンを追い払っちゃうんだもん」
と尊敬の眼差しを向けた。これには僕もまんざらではなく少し嬉しかった。
「ともかく、家まで送るから、帰ろうか」
と言うと、あずさは嬉しそうにうんと肯き歩き出した。
「けんちゃんはあの廃工場で何してるの?仕込み杖?それも気になる」
「修行だ、仕込み杖は師匠にもらった」
「へえ、実は部活で、ネタに詰まってるんだ、レプタリアンの事ネタにしようかと思うんだけど」
僕はアレナのことが脳裏に浮かんで、
「それは絶対にダメだ、余計危険になる、それに…」
「それに?」
「なんでもない」
そう言うと僕は黙って黙々と彼女を誘導するよう歩いた。
「今日はありがとう、いつも助けられてばかりだね」
あずさは切なげに言った。
「おう、気にすんな」
「じゃあまた明日学校で」
それから僕は、やっと家路についた。家に帰ると、母さんが心配そうに、
「今日はいつもより遅かったのね」
と言ってきた。僕は、
「そうだね熱中しちゃって」
と言った。いい加減嘘をつくのにも嫌気がさしてきた。次の日も修行は続いた。あくる日も、明くる日も、そして、ハタ師は言った。
「月天流の技はすべてお前に叩き込んだ、早速実戦に出てもらう」
「実戦というと?」
「俺とコンビで、レプタリアンの巣窟を襲撃し一網打尽にする」
僕は、そう言われて少し楽しみに思った。苦労して身につけた技の数々をやっと発揮できるのだ。
「決行は明日午後八時、今日はもう帰れ」
「アレナのことなんですが、進展は?」
「ああ、そのことか、もとに戻る薬はあるそうだ、しかしそれはこの件が終わってからだ」
ふっと肩の荷が下りたきがした。それから僕は家路についた。明日はいよいよ実戦。楽しみ半分怖さ半分といったところか。
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