第10話 新人教師
「あら、その杖どうしたの?」
案の定そこに引っかかってきたので、
「実は通販で買った新製品の傘なんだよー」
と誤魔化した。
「じゃいってきます」
登校中、久しぶりにあずさが声をかけてきた。
「けんちゃんおはよ」
「おはよう」
少しぶっきらぼうに聞こえたのか、あずさは、何か言いたそうな目をしているが、遠慮していた。
「なんだよ、らしくない、なんか言いたげだけど」
と僕がいうと、あずさは、
「ありがとう、この前は私をかばってくれて」
と照れながら言った。なんだそんなことかと思ったが、彼女にとってはそれを言うことはとても重要で、大切なことだった。
「恩人には礼を言って帰せ、お婆ちゃんの口癖でね、去年なくなったんだけど」
「そうだったのか」
「うんだから、すぐにお礼言えなかったことがモヤモヤしてて」
「寝れなかった?」
「うん、よく分かるね」
それもそうだ、最近、寝れない日々を何度越えたことか。校門をくぐるとチャイムがなった。始業五分前の呼び鈴だ。僕はさあ急ぐぞとあずさを促すとそれにつられるようにあずさは急いだ。今日もつまらない授業を受け、大事な時間を潰すのかと思うとうんざりした。
こんな事するなら、修行していたほうがいい、そう切に思う。三時限目、英語の授業のとき、匂いを感じた。レプタリアンの匂いだ。それは英語教師の補助約の外国人教師からする。今日初めて見る顔だった。どことなくトカゲっぽい。外国人教師は自分の名前をホワイトボードに英語で書いた。
「アレナ・フランクリンでーす、よろしくおねがいしまーす」
とたどたどしい日本語で言い、笑いを誘った。その後、ぎろりと僕の方を睨んで、また温和な表情になった。授業中は何も言って来なかったが、アレナは、授業が終わると僕に、
「話しがある放課後屋上に来て」
と言った。僕は小さくうんと肯いた。昼休みが過ぎ午後の授業が終わると、僕は屋上に向かった。一体何の用だろう?まさかいきなり襲ってきたりしないだろうなとか考えていた.。
屋上に着くとそこにはアレナがぽつんと立っていた。僕は、
「先生」
と声をかけると、アレナは笑顔でそれに答えた。アレナは僕の体を見回して、こう言った。「私がレプタリアンなのはわかるわよね」
と流暢な日本語だった。
「ああ、分かるよ」
と僕が答えると、アレナは続けて、
「正確にはレプタリアンにされた哀れな女なのよ」
と言った。遺伝子操作薬を飲んだのだろうな、と思った。
「あなたは龍刈りと仲間なんでしょ?最近の行動は見させてもらったわ」
アレナは興奮気味にそう言うとさらに、
「あたし、人間に戻りたいの」
と言った。と言われても、そんな方法は僕は知らない。ハタ師に相談するしかないと思い、
「師匠に相談してみますよ、きっと戻る方法があるはずですから」
と僕は言った。アレナは何度も僕の方を見ながら、絶対よと言い屋上から去っていった。
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