第8話 修行

「うーん」

と伸びをして一呼吸おく。最近色々あってよく寝れていなかったので、久々の快眠は気持ちが良かった。暫くして朝ごはんへ向かうと、母さんはおはようと言い。僕もおはようと答えた。これからドラコ討伐の為修行をする。そんな事、誰にも言えるわけはなく、悶々としたまま、一日が過ぎ、学校の授業が終わった。普段ならここから第二音楽室に直行だが、今日からは違う。丸別町の廃工場に向かう道すがら、ぷんと匂いがした。レプタリアンの匂いだ。こんなところにもか、と少々呆れ気味に黙々と歩く。そして丸別町の廃工場についた。大きい鉄の扉はあるが、施錠されているため開けるのは無理そうだ。よく見るとはじの方に小さい人ひとり通れるくらいのドアがあった。そこから中に入ると、

「おお、拳、ようやく来たか」

とハタ師の声。

「実を言うと来ないんじゃないか内心ヒヤヒヤしてたぞ」

と師匠にあるまじき言葉を放った。

「ハタ師、これからご指南お願いします」

と真剣な表情で、言う僕に、ハタ師は

「そう肩肘はらずに気楽にやんな」

とあっけらかんと言った。

「まず何をすれば?」

僕が聞くとハタ師は、

「こいつを斬ってもらう」

と言って、鉱石のようなモノを取り出した。

「剣はお前用に用意した、仕込み杖、周りには怪我して足を麻痺したとでも言っておけ」

目配せして、右側に僕の意識を向けると、そこには、杖がおいてあった。よく時代劇なんかで使われる仕込み杖。実物を見るのは始めてだった。

「抜いてみろ」

とハタ師が言うので、根本からぐっと力を入れると、鞘部分が落ち、立派な刀身が光っていた。

「凄い」

それを聞いてそうだろうそうだろうとハタ師は自慢げに、

「家の親父の作品だ」

と言った。

「何年かまえ龍刈りはやめて隠居したんだがやることがないと落ち着かないたちでな、知り合いの鍛冶職人に弟子入りして今ではいっぱしの剣造れる様になってる、いい年して若手職人とか自分でいってるし」

と笑いながら言った。

「これからお前に教えるのは月天流だ、龍刈りは大きく2つの流派を持っている。日天流と月天流」

「何が違うかというと、属性が違う。日天流は炎や光、雷といった分野に特化している、月天流は、闇、光、水といった分野に特化しているのだ」

「なるほど」

肯きながら、僕は、

「その石は?」

と聞いた。するとハタ師は、

「金剛石の原石だ、まあダイヤとも言うな」

とさらっと返した。

「そんな価値のあるもの斬れません」

と僕がいうと、ハタ師は、はははっと笑って、

「ただの硬い石だと思え、これを真っ二つにできたら次の段階に進む」

と言って、金剛石を網のようなものでぐるぐる巻いて何に使うのかわからない鉄棒に吊るした。

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