第7話 新たな師

そんな事があった翌朝、流石にあずさも声をかけては来なかった。つまらない授業をなんとなくこなし、昼休み。例の大きな木の根本あたりで昼飯を終え、頭に手を組んで寝ているとふと物音がした。ハッとなって飛び起きるとそこには、龍刈りがいた。

「なんですか?びっくりさせないでください」

「びっくりしたのはお前の落ち度だ自覚しろ」

と厳しく弟子を指導するよう龍刈りは言った。

「ふと思うんです、ヤモリさん、僕を奴隸として見てたんだなって」

「実際ドラコからしたらそうだからな、奴ら人を蚊ほどにしか思ってない」

「今日はどういう用件で?」

「ああ、お前、俺の弟子にならねえか?」

呆気にとられた僕はただ龍刈りの咥えている葉っぱの尖端を見ながら、

「弟子になってどうしろと」

と問うた。

「地球を守るんだよ、宇宙人からな、もうこの日本も含め世界は奴らの植民地だが。俺たち龍刈りのグループと地球を開放へ向かわせようとするグループが最近組んだ。ドラコ及びレプタリアン、リトルグレイ、グレイを掃討することになっている、その作戦に参加するための修行を俺のもとでしてみないかという提案だ」

と龍刈りは答えた。

「なんで俺なんですか?」

疑問をぶつけた。

「お前の波動は生まれながらにして高い、ある意味選ばれし者なんだよ」

龍刈りにそう言われ、僕ははっきり言って怖かった。怖気づいていた。が、そんな僕に龍刈りは言った。

「はじめは怖い、当たり前だ。だがなれていく。経験を積めばそれこそ蚊を潰す程度のことだ」

本当にそうなのだろうか?しかしこの龍刈りはそれほど悪いやつではなさそうだしいっちょ乗ってみるかと思い、

「あの、剣術とかやったことないんですけど」

と遠慮深く言った。龍刈りは、

「なんとでもなる要は心よ、俺はハタ、以後ハタ師と呼べ」

と早くも師匠面だった。

「今日はそれだけ言いに来た、明日から修行を開始する、丸別町の廃工場に学校が終わったらこい、以上」

そう言うと、ハタ師は踵を返して去って行った。

(俺が龍刈りに…)

熱く握りしめた拳が少し痛かった。

 放課後、バンドメンバーに説明するため、第二音楽室へ向かった。教室の引き戸を開けると、二人共すでにいた。僕はとても切り出しづらかったけども勇気を持って話した。

「やらなければいけないことができたんだ、だからもうバンドはやれない」 と言うと、二人は納得がいかない様子で、やらなければいけないことって?と聞いてきた。僕はそれは言えないと答えると。取っ組み合いの喧嘩になってしまった。結局喧嘩別れという最悪な結果になってしまった。下校のときもあずさは来なかった。今日は早く寝ようと、心に思った。そして本当に早く寝た。翌朝。

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