第5話 ライブパニック②

あずさは、見られてはいけない秘密を見られた子供のようにしゅんとしている。すると男は、いきなり僕の首根っこを押さえつけ、尋常じゃない力で締め付けてきた。

「きゃああ」

あずさが悲鳴をあげる。なんだなんだと客がぞろぞろ来てその中のひとりが「男が喧嘩してますー」と警察に通報している様を見てサングラスの男は、観念して逃げ出した。彼は慌てていて薬を落としていった、程なくして警察が現れ、事情を聞かれた。その中のひとりが、一際異彩を放っていた。髪は長く束ねてあり、無精髭に和服姿の警官?とクエスチョンマークがつく男だった。そのサムライ風の警官は、男が落としていった薬を、赤外線ライトのようなもので照らすと、うむと頷いて。

「爬虫類には気をつけんとな」

と意味深な事を言って踵を返して去って行った。僕たちは事情聴取を終えると。渚と響也も含め四人で帰路についた。

「しかしなんで薬なんかの誘いを受けようとした?」

渚が、あずさに突っ込んだ。

「いやまあ、なんか前からちょっとだけ興味があって」

「薬駄目絶対だよ」

響也が続いた。

「まあなんにせよ無事で良かったじゃねえか。」

と僕は楽観的な感じで言った。

「気楽だねー」

「らしいわー」

二人に茶化されながら、申し訳なさそうに涙ぐむあずさを見ているといたたまれなかった。帰路の岐路、一人また一人「またな」と言い別れていく。僕は何も言わず、あずさも黙ったまま、最後の岐路に立った。

「じゃあな、くれぐれも気をつけて帰れよ」

念を押すように言う僕の事がおかしかったのか彼女はふふっと笑って。

「大丈夫だよ、バイバイ」

と言って去って行った。今日は本当に大変な一日だった。家に入ると、ふっと気が抜け、じわじわと疲れが出てきた。

「おかえりー」

母さんが迎えると同時に、

「ご飯ちゃんと食べなさいね」

と強く言われた。わかったよと言うと僕は一目散に部屋に帰ってきた。

「ヤモリさん只今」

〈うむおかえり、ぬっ、アレの匂いがするな〉

「あれってなんだ?」

ちょっと思い返してはっとなった。

「もしかしてレプタリアンの匂い!」

〈ご明答、かなり強く密着したようだな〉

僕は今日あった事をヤモリさんに話した。するとヤモリさんは、

〈それは、遺伝子操作薬かもしれんのぉ、このところレプタリアンは数を減らしておってな、若いメスをターゲットに遺伝子操作薬を飲ませ、レプタリアンに変化させていると聞く〉

それを聞いて、僕はあの悲鳴は、レプタリアンにされた女性の声だったんだと確信した。

ふとあの和服姿の警官のことが気になってヤモリさんに聞いた。

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