第4話 ライブパニック
ライブ当日。朝起きて、歯磨き洗面を済まし、朝飯を頂き用をたす。ギターを弾きながら歌っていると、ヤモリさんが語りかけてきた。
〈ライブとやら、あのうるさい騒音がするのだろう?私は行かぬぞ〉
「わかったよ」
と一言。僕はお構いなしにアンプにつないでいないエレキギターを弾きながら歌っていた。
〈何かあったら、そのピアスに気を込め私を呼べ〉
ヤモリさんは言った。
「了解」
そしてあっという間に夕方。ソフトケースにギターをしまって、ライブハウス、【シオンタウン】へ向かった。電車で二駅先の、田舎の都会である。改札を抜け、電車に乗り込む。
そこで、ある匂いを感じた。そうあのレプタリアンの匂いである。この人間界に上手く溶け込んでいるのだなと関心しつつも、人を食らう所業は許せない。目つき鋭く、静かに天井を睨んでいた。目的地についた僕は、電車をおりて徒歩5分ほど歩いて、ライブハウス【シオンタウン】についた。入った瞬間わかった。ここにもレプタリアンがいることに。言いしれぬ不安感が頭をぐるぐる回った。そんな僕に、先に来ていた、渚と響也が、
「おう、けん、待ってたぞ」
と笑顔で迎えた。不安そうな僕に、二人は勇気づけるようなことを言ってくれたが、僕の不安はライブではなくレプタリアンが何か起こさないかということだった。
「まあボチボチやろうぜ」
渚が言うと、響也も「そうだな」と言い、僕も小さく肯いた。ライブ開始20分前。客席が埋まり始めた頃、サングラスをした男が、女を外へ誘っているのが舞台裏から見えた。最初は何も思わなかったが、その男、ちょっとしたら戻ってきてまた違う女に声をかけていた。何かおかしい。
「お盛んなこった」
渚が言うと響也も肯いた。だがそれだけではない違和感に僕は気づいてしまった。しかしライブ開始目前となっているので抜け出すわけにもいかず、僕はとうとう本番を迎えた。♪♪♪ー。
「聞いてください風の吹く街」
♪ー。オクターブ奏法の出だしから、Aメロのベースとドラムのパートがすぎ、サビに入ったところで、自らの楽器音で、小さくしか聞こえなかったが、ああああっという悲鳴が聞こえた気がした。僕は一旦躊躇したが演奏をやめる訳にはいかず、
「さすれば永遠を知り風とともにあらん♪臆せば知りうるあなたへの思い♪」
とサビを歌いきった。そして演奏は続く。さっきの悲鳴は自分の幻聴か? と自問自答しながら頭の中はシッチャカメッチャカだった。それでも無事三曲全部を歌い上げ。バンドは、舞台裏へ戻った。実のところ、バンド名はまだなく、高校の名前をとって青雲高校軽音楽部(仮)という名前で活動していた。舞台裏でオーナーに、「よかったよ」と言われ皆嬉しそうに笑い合っていた。が、僕は気がかりだった。さっきの悲鳴が。すると舞台裏から、客席の女がさっきのサングラスの男に声をかけられ外へ出ていくのを確認した。あずさだった。僕は頭に血が登って、とっさにそれを追いかけた。
「いい気持ちになれるんだぜ、これ」
「そ、そうなんですか?」
そんな会話に割って入るように、僕は言った。
「それ違法薬物ですよね、警察に通報しますよ」
と携帯電話をひけらかした。
「けんちゃん…」
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