第3話 レプタリアン

「助けてぇ」

「おいお前レプタリアンだな、その子から手を離せ!」

するとそれは、言った。

「見られたからには貴様も道連れだぁ」

矛先が僕に向かった。そのスキに、女生徒を逃がすと、僕とレプタリアンは戦闘になった。

ヤモリさんは肩に乗っている。力を使うときだ。レプタリアンは両手を開いて突進してきた。僕は、ジャブを放ってみた。一発レプタリアンにあたるとレプタリアンは苦悶の表情で、「貴様ー」とイキリたっている。これはいけるんじゃないかと、思いっきりストレートをかますと、レプタリアンは、数十メートル吹っ飛んでノックアウトしてしまった。

「すごい、この力」

と感激する僕にヤモリさんは肩からいなした。

「こいつは、なりそこないの雑魚だ、本物はもっと手強い。中には炎を吐くやつ、独自のスキルを持つやつもいる、気を抜くなよ」

とはいえ、昼間っからヘビーな体験をして、いささか興奮気味に午後の授業に出ると、放課後、バンド活動までの時間は、気が気ではいられなかった。まあ流石に授業中にことを起こすことはないにせよ、僕はある種の正義感に芽生え始めていた。そして放課後、第二音楽室へ向かうと、いつもどおり渚と響也がおり、早く合わせようぜと催促してきた。ヤモリさんは見えていないようだった。いつもどおり音を合わせていると、ヤモリさんは言った。

〈なんじゃこの雑音はーやめてくれい〉

と肩からおりてそそくさと机の影に隠れた。

「うわっ、ヤモリだっ」

渚が気づいて捕まえようと机の裏を除くがそこにはもうヤモリさんはいなかった。♪ー。

「いい感じに仕上がったな」

響也が言った。渚と僕は小さく肯いた。

「ライブは、この三曲、風の吹く街、DAY OF SUMMER、月とヤモリでいく、いいな?」

響也が言うと、

「異論なし」

と渚。僕も、

「同じく」

と言って、その日はすぐに解散になった。いよいよ明日はライブだ。夏の終わり、七時過ぎだがもうあたりは暗い。薄ぼんやりとした闇の中、てくてくと帰宅する僕に、

「あっ、また一緒になったね」

と声をかけてきたのはあずさである。僕は知っていた。彼女はもっと早く帰宅できるはずなのに、わざわざ僕の帰宅時間に合わせて、校門あたりではっていることに。それで僕が学校から出ると、丁度校門からわざわざ自転車を引いて、ゆっくり歩いて、僕が来るのを待っているのである。あずさははっとなって、肩のあたりを見て、

「やっヤモリがとまってるよー」

と驚きながら言った。暗いと同化の術とやらも発揮されないのかはよくわからないが、

「最近飼い始めたペットなんだよ~」

と安い文句で誤魔化した。

「ねえ、そのヤモリって、この前言っていたヤモリさん?」

「いや断じて違うぞ」

「絶対にそうだよ意思疎通できてるんでしょ?」

「できるわけないじゃん」

と平然を装い嘘をついているのが何となく疲れた。話を逸らすように、

「明日ライブなんだよ、来てくれないか?」

と誘った。あずさはちょっと躊躇し恥ずかしそうに、

「わかった、行く」

と言ってくれた。そんな二人を眺める影があることに二人は気づく余地もなかった。

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