本の読み方の分析

げこげこ天秤

本の読み方の分析

 「こんにちは」の方は、こんにちは。「はじめまして」の方は、はじめまして。

 天秤と申します。


 先に断っておきますと、このエッセイは、「こういう読み方をすべし!」と強要するものでもなければ、「こうすれば読みやすい」という読み方講座でもありません。私個人のから始まったエッセイです。


 きっかけは、課題図書が課された時でした。自分は読書速度が遅い方なので、ヒーヒー言いながら読んだわけなんですが……そこでふと思ったのです。「あれ? なんでコレ読んでるんだろう」と。


 課題が嫌になったわけでも、文句が言いたくなったわけでもありません。ただ純粋に、不思議に思ったんです。知識を得たいのか? それとも、楽しむため? そうしているうちに、あることに気が付きました。


 本にはがあるぞと。


 こちらを本エッセイで、ご紹介できればなと思っております。



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 結論からいきます。本の読み方には以下の3種類の読み方があると考えています。


 (1) 知識を蓄えるため

 (2) 自分を理解するため

 (3) 本質を見定めるため


 この3つを並べてみると、いかにも1番目が初級者で3番目が上級者の読み方みたいに見えますが、この3つの読み方に優劣はないと思っています。読者の性質や読む文章によって適材適所があるといった感じでしょうか。


 ひとつずつ、詳しく見ていきます。


 

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【1、知識を得るため】


 これは、ほとんど説明不要かもしれません。知らない知識を得るために読む。以上です。

 

 具体的には、ネット記事や新聞、あとは新書、参考書、教科書を読むときなんかは、この読み方をしています。「知識を知って楽しい!!」という側面はあるにせよ、これはあくまで付随的なものなのかなと。主たる目的は、あくまで知識を得るためです。


 仮に、この読み方で読んだ場合、読書感想文は「○○の事を知れたのでよかったです」になると思います。1番目の読み方は、むしろ要約を書くときに使う読み方でしょう。



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【2、自分を理解するため】


 読書らしい読書は、この読み方です。「この話、読んでて楽しい!!」「このキャラに腹が立った」「設定がおもしろい!!」「この展開は悲しい」など、特に小説を読むときは感情の揺れ動きがあることがあります。評論を読んでいても、「何言ってんだコイツ?」とか「これを考えるのスゲー」となることがあります。


 一歩進めてみましょう。


 何が、楽しかったのでしょう? 何に、腹が立ったのでしょう? エロ描写やグロ描写に出会ったときに、目を背けたくなる人がいる一方で、嬉々としてそうした描写を好む人もいます。舌を巻く人もいれば、研究対象にする人もいます。


 そこから見えてくるのは、自分という存在です。なるほど、自分は○○なことを好きな人間なんだ。××なことに腹を立てる人間なんだ。△△な側面がある人間なんだと、見つめ直すことが出来るのがこの読み方です。


 ○○国は好きだ/嫌いだ。○○という人物は素晴らしい/いけ好かない。そうしたことから、自分がどんな人間なのか見えてくるのではないでしょうか。



 ところで……


 「この本好きじゃない。だって、この本の主義主張は嫌いだもん」――普段なら、それでいいかもしれません。しかし、その本がもし課題図書なら?



 *****



【3、本質を見定めるため】


 なぜ、本は自分の嫌いな主張をするのでしょう? あるいは、自分に心地の良いことを言ってくれるのでしょう?


 3番目の読み方は、を追求する読み方。そして、解釈をする読み方でもあり、その文章の本質を暴こうと試みでもあります。


 なぜ、このキャラクターはこのセリフを言うのか? なぜ、こうした展開が用意されているのか? どんな隠されたメッセージがあるのか? 作者の意図は何なのか? この物語・評論は、これまでの作品の中で、どのように位置づけることが出来るのか? オリジナリティあふれたものなのか、既存のものの域を出ないのか、あるいは時代を先取りしすぎているのか、逆に原点回帰をしていて面白いものになっているのか……等々。


 3番目の読み方は、特に、評論や学術書、史料を読むときに適しています。個人的な経験で恐縮なのですが、リアル天秤の卒論は外交に関するものでした。なので、歴史を作った当事者たちの史料を読むことになるのですが……これを1番目の読み方で読むとまずアウトです。


 例えば、首相の回顧録なんかを読んで、「○○」と書いてあったので「○○」と鵜呑みにしては駄目です。回顧録は、自分の後世での評価を上げるために嘘ついている可能性もありますし、そうでなくとも、誤解や間違いを書いてしまっているかもしれません。


 こうした時に必要なのは3番目の読み方です。なぜ、○○なことを言っているのか? どうして、××な認識に至ったのか? そこから見えてくるのは別の景色でしょう。


 「Aは、Bを素晴らしい人物だと評価している」から「Bは素晴らしい人物だった」――ではありません。


 「Aは、Bを素晴らしい人物だと評価している」が、「そう評価するのには理由があった。AにとってBは○○な人物だったのである」――といったような感じです。



 ***


 

 しかし、3番目の読み方は難易度が高い!! 偉そうに講釈を垂れていますが、こんなのをいつも出来るわけではありませんし、この読み方をして解釈違いをおこすこともあります。


 3番目の読み方をするコツは無いのでしょうか? 自分が見つけたコツは、2つあります。


 ● 作者は誰なのかを知る。

 ● に意識して読む。


 まず、作者が誰なのかを知るのは重要です。「なんか、いい加減なことが書いてあるけど、なんでだろう?」と作者を見ると、畑違いの人間が無理をして書いたものであったりすることがあります。あるいは、「左」の意見が書いてあったのなら、作者が「左」の可能性が高いです。逆に、「左」の意見が書いてあるのに、作者が「右」であれば、注目して読む必要があるかもしれません。


 なぜ? と。


 人が変わってしまったのか?

 社会がそうさせたのか? 

 時代が変わったのか?


 見えてくるものがあるはずです。


 

 次に、書かれていないことに意識することです。これが、よく「行間を読む」なんて言い方がされます。


 撮られた写真。ここに映っているものは。あくまで、です。


 なぜ、作者は○○を書かなかったのか。

 なぜ、作者は××を切り捨てたのか。


 こうした問いかけをして読むと、様々なことが見えて来るかもしれません。歴史教科書が切り捨てたもの。に流し込むために選定された事象。そして、なぜそうした書き方をしたのか。それは、作者のせいかもしれませんし、時代の流れのせいかもしれません。




 *****



 まとめです。


 読み方の種類は、以下の3種類です。


 (1) 知識を蓄えるため

 (2) 自分を理解するため

 (3) 本質を見定めるため 


 そして、3番目の読み方をする私が考えるコツは、①作者は誰なのかを知る、②

書かれてないことに意識して読む、でした。



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 小説家の端くれなら、こういうのを登場人物に言わせるのが本来なんでしょうが、物語の進行上、まとまった書き方が出来なかったので、このエッセイにて供養させていただきます。


 ここまで読んでいただき、ありがとうございました! 感想等あればお気軽にどうぞ(*´ω`*)

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