第23話 鍛練の日々
アレン、セレナがダンジョン初挑戦した翌日、レベルアップの重要性に気付いたアレンのために、今度は裏ダンジョンからスタートした。
「な、なんだ……あの魔物はっ!? ウルフじゃないのか!?」
「あれはツインヘッドハウンドだよ。ほら二人とも、気付かれる前に早く石投げて」
「わ、わかった!」
「わ、私はこの杖を振るわっ!」
アレン達は初めて見るA級の魔物に怯えながらも何とか一撃入れようとする。アレンは足下にあった石を、セレナは杖を振り聖なる刃を飛ばした。
ギャン!? グル……ガァァァァァァァッ!!
「ロランッ! 頼むぞっ!!」
「ひぃぃぃぃっ!? は、はははは速いぃぃぃっ!」
「オッケー」
ロランはマジックバッグから黒い剣を取り出し魔物に向かい正面から切り込む。
「はぁっ! 水平斬りっ!!」
ガッ!?
ロランは地面と平行に剣を振り、魔物の口から上下に真っ二つにした。
「あ」
「んきゃあぁぁぁぁぁっ!?」
勢いが良すぎたのか、切り離された魔物の上部がセレナに向かい飛んでいった。
「ほいっス!」
「ひぃぃぃぃっ!?」
セレナに当たる直前でジェードが踵落としで肉片を地面に叩き落とした。
「あ、ありがとう……」
「いえいえ~」
「っ! こらぁっ! 後ろに飛ばすなぁぁぁっ!」
「ごめんごめん」
セレナに謝っていると魔物の死体が光の粒子になり、そのあと宝箱に変わった。
「ほ……ほわぁぁぁぁっ!? いきなり虹色の宝箱っスか!」
「うん。地下二百階層から先は全部虹色の宝箱だよ」
「全部虹色……ふへ……ふへへへへ……。億万長者っス~!」
ジェードは宝箱に飛び付き蓋を開いた。
「……ほ、ほわぁぁぁっ! こっ、こここここれはっ!」
「良いモノ入ってた?」
「凄いっス!」
ジェードは宝箱から中身を取り出し頭上に掲げた。
「……なにそれ?」
「これは忍者専用の投擲武器っス! ロランさんっ、これ……」
「あげるよ。忍者専用なら僕使えないし」
「ふぉぉぉぉぉっ! 裏ダンジョン最高っス! ガンガン倒していきましょうっ!」
「あ、うん」
ロランは階層を降りず、同じ階層を回り魔物を狩り続けていく。
「こ、これはっ! 最高級のオークキング肉! 何キロあるのこれ……」
「うぷっ、ロ、ロラン! 狩り過ぎだっ! レベルアップ酔いがキツいっ!」
「レベルアップ酔い? あ、そっか。いきなりレベル上がってるから体がついてこないんだね。じゃあちょっと休憩しよっか」
アレンの顔が真っ青になったため、ロランは一度狩りを中止し、一階上の部屋に戻る。ここは地下二百階と二百一階の狭間にある部屋で、魔物が現れないセーフゾーンになっている。
「はい鏡。レベルどこまで上がった?」
「……100だ」
「私も100です」
「ウチは150っス!」
「ふむふむ……。まだ足りないかな。ちなみに最初に倒したツインヘッドハウンドのレベルは180だよ」
「……先は長いな」
「いや、そうでもないよ。このペースでいけば今日中に200はいきそうかな」
アレンはロランに尋ねた。
「お前が帝国軍と戦う前200だったよな? 今はいくつなんだ?」
「僕? 今は258かな」
「化け物め……うぷ」
「酷いなぁ……」
そこでジェードが話し掛けてきた。
「皆さんお腹空かないっスか?」
「そう言われれば……」
「俺は食えそうにない」
「僕は空いたかな。ちょっと早いけど昼御飯にしよっか」
「「オークキング肉のステーキで!」」
「あ、はい」
どうやら二人はオークキング肉を食べたくて仕方ないようだった。ロランは石を水魔法で洗い、風魔法で乾かしてから火魔法で熱した。そしてそこに厚さ二センチにスライスしたオーク肉を並べ熱する。
「なんて良い香りなの……!」
「は、早く早くっス!」
「はいはい」
レアで焼き上げたステーキにロラン特製のソースをかけ香ばしく仕上げる。そして二人に一枚ずつ皿に乗せ渡した。
「はぐっ……ッッッッ!? う、うんまぁぁぁぁぁぁぁっ!? 何このお肉っ! 口の中で消えてくわぁぁぁっ!?」
「さすが最高級肉と言われるだけあるっスね~。こんな贅沢ができるなんて……! ロランさんの仲間になって良かったっス~」
「大袈裟だなぁ。もっと美味しい肉もあるのに」
「「……え?」」
ロランはマジックバッグから真っ赤な肉の塊を取り出した。
「ロランさん? まさかその肉は……」
「ドラゴンの肉だよ」
「ド、ドドドドドドドラゴン!? 王様ですら一生に一度食べられるかどうかわからない超希少な伝説の肉じゃないっスか!」
「そうなの? 僕いつも食べてたけど」
セレナとジェードは唖然としていた。
「も、もしかしてドラゴンの肉も落ちるんっスか?」
「うん。たまに」
「宝の山じゃないっスか!」
「魔物を倒せればね。倒せなきゃ手に入らないんだからそう簡単な話じゃないんだけどね」
「でもロランさんなら倒せるんっスよね?」
「え? うん」
「……一生ついていくっス!」
そこでようやくアレンが復活した。
「はぁ……落ち着いた。ロラン、俺にも一枚焼いてくれ」
「良いよ。ドラゴンで良い?」
「当然!」
「「ズルいわよ!?」」
「ははは、じゃあ二人にも薄く切って焼くよ」
その後、ドラゴンの肉を食べた三人は一瞬天に召されていった。
「……美味すぎる。これ以上の贅沢はないといった感じだな」
「わ、私達も早く強くなってガンガン狩りましょう!」
そこでロランが三人に言った。
「いや、多分君達はソロじゃここに入れないよ」
「「「え?」」」
「ほら、表ダンジョンの最下層にボス部屋があるよね? 僕は倒して強さを選んだからこの部屋に飛べるけど、みんながソロで挑む時はボスを倒して強さか富か選ばないと」
「なるほど。ちなみにそのボスはどんな魔物だ?」
「名前はわかんないけど、腕が八本あって全部の腕に違う武器を持ってたかな。戦い辛かったよ」
「……やはりもう少しレベルを上げておこうか」
それから連日ダンジョンに潜り、まず最初にジェードがレベル200に到達した。そしてどうにかソロで地下二百一階の魔物を倒せるようになった。
「やったっス!」
「さすがジェードだね。時間はかかったけど危なげない戦い方だった」
「にししっ、強くなりつつお宝が手に入るダンジョンは最高っスね!」
「そうだね。これからは自分で倒した魔物から出た宝箱は好きにして良いよ」
「マジっスか! ひゃっほぉぉぉぉいっ!」
ジェードは飛びはね喜んでいた。
「もう少しだな。この数日であり得ないくらい強くなっている」
「そうですね~……。ダンジョン挑戦初日とはもう別人です」
「二人も明日には200に届きそうだね。その後はボスに挑戦しても良いかも。けど僕と一緒じゃないからまた一階から潜らなきゃダメだけどね。三人で協力しても良いし、無理なく進めば良いよ」
「ああ。ありがとうなロラン。お前のおかげで強くなれた」
「あははは。先走った事はこれで許してもらえるかな?」
「ああ。だが二度目はないぞ?」
「は、はい……」
そして翌日、二人もまたレベル200に到達し、以降は三人でボス部屋を目指し、ダンジョン挑戦を続けていくのだった。
そしてロランはというと。
「さてと、僕も階層進めよっかな。目指せ最下層!」
ロランは引き続きソロで潜り続けるのだった。
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