第5話 私と彼女

ある小さな田舎町に私は生まれた。

父も母も仕事で忙しく、平日はあまりかまってもらえなかったが、休日はどこかに遊びに連れて行ってもらえた。

小学生になってからは、友達ができた。田舎の小学校で人数は少なかったけどその代わりにとても親密になれた。

そして8歳になったある日。

森で友達と遊んでいた時、私は彼女に出会った。

水色の髪に青い瞳。

はじめてみた。


「こんにちは」

不思議なものを見るような目で彼女を見ていた私達に彼女は話しかけてきた。

その時の私からすれば彼女はお姉さんだった。

彼女は次の日から私達の遊びに付き合うようになってくれた。とはいってもはじめて出会った日、帰り際に私たちが誘いまくったのだが。


勉学で悪い成績を取った時も、親に怒られた時も彼女は私を慰めてくれた。


月日は流れ、

私はお嫁にいくことが決まった。

それからしばらく彼女とは疎遠になった。




彼女と再会したのは私が50歳になった時だった。


「久しぶり」


彼女は最初に会った時と変わらぬ口調で話しかけてきた。私は嬉しかった。

けど、彼女を見た瞬間、私は気づいた。

彼女が歳をとっていない。

それどころか私と会った時から何も変わっていないのだ。

尋ねたことがある。


「なんで歳を取らないの?」


「さあ、なんでだろうね」


はぐらかされた。

「言わないとダメ?」


「そんなことないよ」


私は答えた。

例え、私と違って歳を取らなくても、姿が変わらなくても彼女は私の大切な人達の一人だ。



時が経った。

私ももう65歳になった。

でも今日は暇じゃない。

娘とその夫、そして孫達がやってくる。


「あなた、もうすぐいらっしゃいますよ」

「おお、そうか」


私は夫にそう言った。

私も夫も今日を楽しみにしていた。

だってかわいい孫に会えるんですもの。



ピーンポーン

インターホンが鳴った。


「はいはい、今開けますよ」

玄関を開けた。

そこにいたのは娘と夫。そしてその子供達だ。


「お母さん、久しぶり」

「お義母さん、お久しぶりです」

「ようきたね、ゆっくりしていきんさい」


「あ、おばあちゃんだ!やっほー」

男の子がそう言った。私の孫だ。

孫も一緒だ。

孫は3人いる。

一人は今年中学2年生。もう二人は今年小学4年生になった。


「よしよし、瑠奈ちゃん。よく来たね」

「えへへ」


頭を撫でられて嬉しそうにしてる孫。生まれつき金髪で青い瞳をしている。

この子と私は血が繋がっていない。けれどもそんなのは関係ない。この子は私のかわいい孫だ。


「優菜ちゃんは今年中学2年生になったのね」

「うん、そうだよ」

「大きくなったねえ」



「みんなお入り。あなた、来ましたよ」

私はリビングにいた夫に孫達が来たことを伝えた。

「おお、そうか。よう来たな」


夫も嬉しそう。

今日は賑やかになること間違いなしね。



ふと、私は孫が生まれてすぐのことを思いだした。

子供を産んだ娘が退院してすぐのこと。こちらに帰省している時だった。娘は養子を迎えた。金髪で青い瞳をもつ女の子。


ーーーー過去


「どうして養子を迎えようと思ったの?」

私は娘に聞いた。

「ある人と再会したの」

「ある人?」

「とても不思議な人よ。私も子供も助けてもらったの。そこで次女と会ったの」


笑顔で話す娘をみて私の頭にある人物が浮かんだ。

水色の髪に青い瞳をもつ少女。何十年経っても変わらないあの人。


「樹と決めたの」

私は樹、娘の夫の方を見た。


「琴音も子供達もぼくが守ります。心配なさらないでください」

彼は真剣な眼差しで言った。

覚悟の上なのだ。


ーーーー現在


日本の某所

深い森の開けた場所にある家。

周りの森は結界で囲まれており人は入ってこれない。そこに暮らすのは二人の住民。


「ただいまー」

「おかえり、コハル」

帰ってきたのは水色のような髪に青い瞳をもつ少女。迎えるのは彼女の兄、ジバリだ。二人とも年齢は800歳を超えているが不老ほとんど不死なため肉体に老いはない。


「どうだった?昔からの友人と久しぶりの再会は?」

帰宅して手を洗い、リビングのソファでくつろぐコハルにジバリは尋ねた。

「今日はやめといた」

「どうしてだ?」

「娘とその旦那、孫が来て忙しそうだったからね」

「孫…そうか、昔からの友人というのは琴音の母親だったな」

ジバリは思い出したかのように言った。


「そゆこと。あ、お兄、そろそろ晩ご飯にしよ。お腹減った」

「そうだな。今日はカレーだ。コハル、ゆで卵の殻を剥いといてくれ」

「おっけー」


時刻は夕方。不老な肉体でもお腹は減るのだ。


ーー

その頃、琴音の母親は遊ぶ孫達を眺めながら琴音と一緒に晩御飯の準備をしていた。


(いつか、彼女も呼んでパーティでもできたらな)

琴音の母はそう思うのだった。






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