第4話 新しい友達
私は凪。
学校ではつり目で怖いのかみんなから避けられてきた。
私自身、内気で自分から話しかけるのが苦手だった。一度でも話せれば大丈夫なんだけど。
そのせいか今まで友達と呼べる人が出来たことはなかった。
学校が終わるとすぐに家に帰る。そんな日々をずっと過ごしてきた。
今日から新学年になった。
特に変わらない日々だと思っていた。
「私、朝川瑠奈。よろしくね」
新しいクラスで話しかけてくれた人がいた。
朝川瑠奈さん。
前のクラスでも廊下を歩いている時にたまに見かけたことがあった。
髪の色が黄色だからすぐに顔と名前は覚えれた。
「あ、えっと、私、米沢 凪」
「よろしくね。凪」
彼女は笑顔で語りかけてくれた。
「ねぇ、凪。今日学校終わったら一緒に遊ぼう」
突然の誘いに私はびっくりした。
「え?いいの?」
「全然いいよ。教えるから私の家に来て」
放課後、瑠奈ちゃんは帰りの会が終わって何やらちょっかいかけられてたみたいだったけど何事もなかったかのように私と一緒に帰ってくれた。
朝川奈緒っていういつも一緒にいる男の子も一緒だ。
「瑠奈、その人知り合い?」
朝川くんは瑠奈ちゃんに聞いた。
「うん!米沢 凪っていうの。仲良くしてよね」
瑠奈ちゃんは私に目配せをしながら答えた。
「米沢さん、よろしく」
「あ、うん。こちらこそ」
悪い人じゃなさそう。
帰り道、私は今日学校であった事を聞いてみた。
「瑠奈ちゃん」
「ん?」
「今日学校でちょっかい出されてなかった?」
「ちょっかい?」
瑠奈ちゃんは何のことだろうというような顔を浮かべて首を傾げた。
「瑠奈、帰りの会の後のことだよ」
ここで朝川くんが助言した。
その言葉を聞くと思い出したかのように
「あー、あれね」
と瑠奈ちゃんは答えた。
「あいつなんて名前だっけ?」
「横田広戸くんだよ」
「知ってるの?」
「前も同じクラスだったから。威張ってて偉そうだからみんなから嫌われてるよ」
「ふーん」
瑠奈ちゃん興味なさそう。
そういえば、瑠奈ちゃんの髪って地毛なのかな。
「瑠奈ちゃんの髪って元からそういう色なの?」
「そうだよ。生まれた時から金髪だよ」
そうなんだ。親が外国人なのかな。
それから、私は瑠奈ちゃん家の場所を教えてもらい、一旦自分の家に帰った。どうやら朝川くんとは家族で一緒に住んでるらしい。少しびっくりした。
家に帰った私は服を着替え、ご飯を食べて瑠奈ちゃんの家に行った。
ピーンポーン
「はーい」
インターホンから聞こえた声は女の人の声だった。瑠奈ちゃんのお母さんかな。
「あ、あの、朝川瑠奈さんいますか?」
私はちょっと緊張しがちに言った。
「ちょっと待ってね」
そう言われて待っているとすぐに玄関の扉が開いて瑠奈ちゃんが出てきた。
「凪、いらっしゃいー!。入って入って」
「お邪魔します」
家に入ると玄関を通ってすぐのリビングで女の人が出迎えてくれた。
「こんにちは。ゆっくりしていってね」
「こ、こんにちは」
黒髪な女の人は優しい口調で私に話しかけてくれた。瑠奈ちゃんのお母さんかな。瑠奈ちゃん金髪だからお父さんやお母さんも同じだと思ってたけど。
「お母さん、凪だよ。私と奈緒の新しい友達!」
瑠奈ちゃんは嬉しそうに話した。
やっぱり瑠奈ちゃんのお母さんだったんだ。
「ねえ、瑠奈ちゃん」
「ん?」
「お父さんが外国人なの?」
私は聞いてみた。
「えーと、なんて言えばいいのかな」
瑠奈ちゃんは言葉選びに困っているみたいだった。
「ふふ、私と瑠奈は血が繋がってないの。でも、私の子供よ」
瑠奈ちゃんのお母さんが答えてくれた。
養子ってことかな。
凪「そうなんですか」
瑠奈「そういうこと。ささ、私の部屋に来て。奈緒も行こうよ」
瑠奈ちゃんはソファに座っていた朝川くんも呼んで私を自分の部屋に案内してくれた。
ーーーー
「瑠奈ちゃんと朝川くん同じ部屋なの?」
「そうだよ」
「寝るときは?」
「寝るときは一階の和室で寝てる」
ずっと一緒なんだ。
まあ、家族ならそうだよね。
「何して遊ぶ?」
私は瑠奈ちゃんに聞いた。
一応トランプは持ってきたけど。
「実は何も考えてなかったりするの」
瑠奈ちゃんは申し訳なさそうにそう答えた。
「そんな申し訳なさそうな顔しないで。私は誘ってもらっただけでも嬉しいからさ」
「そう?」
「うん!」
私は嬉しく思ってた。
今まで遊びに誘われたことなんてなかったから。
「近くの公園に行ってみよ」
朝川くんがそう提案した。
「それいいね!二人とも、行こう!」
そう言って瑠奈ちゃんは部屋を出た。私たちもつづく。
瑠奈ちゃん切り替え早いね。
ーー公園にて
河川敷に作られた公園。
川や広場があり、近所に住む人や学生、子連れの人がよく遊びに来る場所。夏には水遊びをする人が多い。地域の憩いの場所。
「ここ久しぶりに来た」
私は以前来たことがあった。
凪「二人はよく来るの?」
瑠奈「たまにねー」
瑠奈ちゃんたちは広場を歩いて川の方に向かっていく。
「いつも何して遊ぶの?」
瑠奈「特に決まってないけど。この前は水切りしたよ」
「私、水切り得意だよ!」
水切りするために川に向かって歩いてるのね。
二人がたどり着いた場所は広場から川に沿って少しだけ奥に行った場所。そこには川でよく見る丸い石がたくさんあった。
「ここで水切りしてるの?」
瑠奈「そう。周りに人もいないからね」
そう言って瑠奈ちゃんは水切りに適した石を探し始めた。
「ねえ、朝川くん」
「ん?」
「いつも水切り何回くらいいくの?」
「あんまりいかないよー。何回?」
「私の最高は28回!」
「すごいじゃん」
日本記録には届かないけど自分でもすごいと思う。
することがなくて暇してた時、よくやったからね。
石を探していた瑠奈ちゃんが戻ってきた。
手には平たい石がいくつか。
「まー、前にやった時は川が割れたけどね」
「はぁ?」
川が割れる?どういうことだろ。
「そんなの無理だよー」
私がそう言うと、瑠奈ちゃんは朝川くんと目で何やら合図を取った。
「まあ、見てなさい」
瑠奈ちゃんはそう言って探してきた石の一つを手に取り、水切りの要領で川に向かって投げた。
ドシャァァァァ
私は目を疑った。
川が割れた。
「……」
驚いて声が出ない私に瑠奈ちゃんは話しかける。
「びっくりしたでしょ。このことを話しておかなきゃと思って家に呼んだの」
「み、み、水切りで川が割れる…ことを?」
気づけば私は驚きで腰を抜かしていた。
瑠奈「いや、そっちじゃなくて」
瑠奈ちゃんは苦笑いしながら私を見ていた。
瑠奈ちゃんは自分と朝川くんの事をいろいろ話してくれた。生まれてすぐ命の危機にさらされていたこと。ある人物から特別な力をもらって生きながらえたこと。そのおかげでさっきみたいな凄まじい力を得たこと。今まで仲良くなった人はいても関係が壊れるのを恐れて言い出せなかったこと。だから、力のことを伝えた上で友達になって欲しかったこと。
瑠奈ちゃんは話し終わると腰を抜かしていた私の手を握って立たせてくれた。
「凪、こんな私とでも友達になってくれる?」
瑠奈ちゃんは若干不安そうな顔で聞いてきた。
川を割るような人がいたら誰だって怖がって逃げてしまう。そう思っているのかも。でも、私は違う。
「瑠奈ちゃんは瑠奈ちゃん。私の大切な友達だよ」
私は笑顔でそう答えた。瑠奈ちゃんはほっとしたような顔をした。
私は瑠奈ちゃんの後ろにいた朝川くんにも言った。
「朝川くんもね」
「お、おう。ありがとう」
瑠奈「いや、奈緒はおまけだよ」
奈緒「誰がおまけだ」
「ところで瑠奈ちゃん」
「どうした?」
「なんで私だったの?他にも友達になってくれそうな人いたと思うよ?」
私の方からも尋ねてみた。
「優しそうで面白そうだったからだよ」
「え?そうかな?」
そう思ってくれてるなら嬉しいな。
瑠奈「特に腰を抜かしているところとかね」
奈緒「ほんと、それ」
「あ、あれは誰だってびっくりするよー」
私たちは笑い合った。
「瑠奈ちゃん、朝川くん、今日からよろしくね」
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